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由佳と鳥取

梅雨の晴れ間にウオーキングに行ってくる。

歩きながらダイブだ。


今、由佳と国道53号線を北上している。

前に何かのときに誘った鳥取砂丘に向って。


「私、鳥取っていうか山陰には行ったことがないの。真ちゃんは?」

「俺は小学校の頃に家族で正月に出雲大社に行ったことがあるけどそれだけ。新見からだと割と近いから。」

「そうか。県北だと島根や鳥取も近いね。」

「でも、用事がないから行くことがないんだよな。結局、行くなら観光になる。」

「そうなるのか。」


「仕事の方はどう?忙しい?」

「うん。もうすぐ期末考査でな、授業しながらテスト問題も作らないといけないから、結構忙しい。テストが終わったら、次は採点と1学期の成績処理があるし。しながらまた授業だからこれまた忙しい。」

「ほんと、学校って、次から次へと行事があるよね。」

「そう。これでもかって言うくらいに。それに加えて、夏休み明けの2週後に文化祭と体育祭があるんだよな。」

「そうそう、私も高校の頃そんな感じだった。夏休みの間に準備するのよね。楽しかったな。1年のときは、みんなでワイワイ言いながらああでもない、こうでもないって言い合いながら大きなもの作ったよ。2年では劇、3年では模擬店。」

由佳が昔を懐かしがっている。

「俺たちは大変だけどな。でも、夏休み中の割とゆっくりできる期間に生徒と一緒に楽しめるいい機会でもあるけど。普段見られない様子が見られて、どんな子かがよくわかるよ。」

「そうなの?。私たちも、先生に観察されてたのかな。」

「うん、絶対そう。橘って普段はまじめそうだけど、こういうときには弾けるんだなって、先生、見てたんじゃない?」

「えー、そうなの?」

「やっぱりそうか。」

今の勤務校でもそういう子がいて、俺はそんな子が好きだ。


「せっかく鳥取まで行くんだから、ほかにもどこか行かない?それなら、行くまでに調べとこうって言っとけばよかったな。」

「うん、行けるんだったら行きたいよ。どこでも。」

「夏だったら海水浴場がいっぱいあるから泳げたけど。由佳のナイスバディーも拝めたし。」

「また、そういうこと言う。今の真ちゃんの目ってやらし過ぎるよ。」

あまりにも辛らつだ。

軽いジョークなのに凹むわ。

もう何もしゃべりたくない。

由佳にもわかるように不機嫌にムスッとして運転してやる。

なのに

「ほかには?いいところないの?真ちゃんのお勧めは?」

ニコッとして普通に聞かれて戸惑う。

俺の大人げなさを反省。

「白兎神社っていう神社がある。」

「どんな神社?」

「因幡の白うさぎの話は知ってるだろ?大国主命の。」

「うん、聞いたことがある。」

「その白いうさぎが神様の神社なんだ。俺、うさぎが好きだし神社も好きだし、行ってみたいんだけど。」

「うん、因幡の国らしい神社ね。行こうよ。でも、真ちゃんがうさぎが好きなんて初めて聞いたよ。」

「言ったことなかったかな?俺、犬も猫も飼ったことはあるんだ。小学校に上がる前頃に犬がいたけど、これは親が飼ってたようなもの。犬って集団の中の個体の間に順位があるから、自分より下って判断したら馬鹿にするんだよな。全然俺にはなつかなかったし、俺も嫌ってた。今思うと不幸な関係だったな。猫は、高校のときに姉ちゃんが突然子猫をもらってきてネコを飼うことになったんだけど、そいつが夜に出歩いてはほかの猫とケンカしたりしてケガばかりしてて。大けがして帰ってきたときもあったよ。どうやら車にひかれて骨折したみたいで。動物病院に連れて行って手術してもらった。それでもうネコはウンザリって思ったよ。」

「ふーん。うちは長く犬を飼ってたよ。」

「でな、うさぎを飼ってる知り合いがいて、うさぎはかわいいよって、溺愛ぶりを聞かされて、どうなんだろうってペットショップに行って見てみたら、それが可愛くってやられちゃったよ。」

「うさぎってなつくの?」

「そりゃ、どんな動物でも愛情を注いで育てたらなつくよ。カメだってヘビだって。大学の寮で、俺が2回生のときに入ってきた一回生の同部屋になったヤツで、大きなミドリガメを連れてきたヤツがいたよ。富山から来たヤツでね。こどもの頃から飼ってるんだって言ってて「カメゴン」って呼んでた。大きなタライで飼ってたな。俺が先に学校から部屋に帰ってもカメゴンはおとなしくしているままだったけど、そいつが帰って来たら嬉しそうにタライの中を動き回ってたよ。で、うさぎってイヌやネコと違って草食動物だろ。言わば狩られる側。だから臆病なんで、この人は守ってくれるって信じてくれたら万全の信頼を寄せてくれるらしいよ。」

「そうか。イヌやネコとは立場が逆だね。わかるよ、それ。」

「それに、家の中で飼うから毎日散歩に行かなくてもいいだろ、予防接種を打たなくていいだろ、もともとうさぎには声帯がないから鳴かないんで近所迷惑になることはないだろ、それに糞が臭くないいんだよな。」

「なんか、いいことずくめみたい。私、騙されてしまいそう。」

「騙してなんかないよ。いつか俺と由佳とうさぎで暮らしたいな。」

「私と真ちゃんとかわいいうさぎと3人でか。楽しそう。そのうちこっちが増えて4人や5人でになるかも。なんかその気になってきちゃったよ。それまでにうさぎぎのこと勉強しておかないと。」

こっちが増えるって、結構大胆なことを言うな、まだ結婚前なのに。

由佳は子どもが二人ほど欲しいのかな?

俺は二人は欲しいけど。


高速道路を使わなかったので時間は掛かったが、とりとめもなく話していたら、やがて鳥取市内に入った。

ほどなく砂丘に到着。

「わーほんと、砂漠みたい。あの向こうに見えるのって海よね!」

由佳が興奮している。

「あれ、ラクダ?本物見るの初めて。やっぱり砂漠みたいなもんだからラクダもいるんだ。」

いやいや、そうじゃないいんだけど、今は黙っておく。

「すごいね、広いね。砂が山になってるね。」

海の方まで歩く。

どんどん日本海が広がっていく。

砂丘もいいが海もきれいだ。

かなり歩きまわて、俺たちは砂丘を楽しんだ。


砂丘を堪能したらお腹がすいてきた。

昼は考えてなかったので回転寿司で済ませた。


腹を満たしたら白兎神社へ。

国道9号線を西に走る。

しばらく走って海沿いになったら、やがて看板が見えてきた。

国道を挟んで海と反対側に神社がある。

駐車場の端に大国主命とそれをうたっちして見つめるうさぎの像が。

鳥居をくぐって少し歩いたら、階段と平らな道が交互に続く。

その両側にたくさんの石柱があって、全部の上にうさぎの像が乗っている。

跳ねているのや立っているのやいろいろいろ。

「かわいいねー。」

由佳がなでながら登っていく。


拝殿は思いのほかこじんまりしていたが、由緒ある神社らしいたたずまいだった。

二礼、二拍手、一礼。

由佳の作法もだいぶさまになっている。

俺の願いはやはり一つ。

いつまでも由佳と一緒にいられますように。


小さな陶器の白いうさぎの中に入っているおみくじがあって、由佳がひいた。

またもや吉。

一緒に見る。

縁談のところは「こころかわらねば叶うでしょう」。

「変わるわけないのに。」

由佳が小さくつぶやくのが聞こえた。


帰路に着く。

ここからは長い。

でも、二人にとっての楽しい時間が始まる。

何の話からしようか。


「由佳、動物を数えるのって、普通一匹二匹だよな。では、うさぎってどう数えるでしょう?」

「それくらい知ってるよ。一羽二羽でしょ。」

「正解。では何で哺乳類の中でうさぎだけ羽で数えるのでしょう?」

「ん~言われてみれば変よね。何でだろう。」

「所説あるんだけど、明治になるまでの江戸時代って、仏教の教えをみんなが守ってて四つ足の動物は食べなかったんだよ。で、うさぎだけは鳥って言うことで食べられてたんだって。だから、鳥と同じ羽で数えられていたんだって。」

「なんで、うさぎが鳥なの?」

「これも諸説あって、二本足立つからとか、長い耳が羽のようだからとか、鳥のように網で捕まえるからとかで、とにかくこじつけて鳥ってことにしたみたい。」

「へー無理やり感が強いな。」


話は尽きない。

でも、もしもする話がなくなったら、きっと由佳が、生物の面白い話をしてって言うだろうな、前のときみたいに。

そうなったら、いくらでもありすぎて、反対にどれにするか悩んでしまいそうだ。

なら、次は俺の得意なミツバチの話だ。

中でも女王バチの話。

俺としてはどれも面白いと思うのだが、由佳には言わない方がいいことは言わないようにしないと。

何はともあれ、あのときのような話は絶対にしない。

俺も成長したから。

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