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由佳とテント泊1

5月の下旬になった。

来週あたりに梅雨入りだそうだ。

毎年ながら、梅雨の時期は嫌いだ。

じめじめして気持ちも上がらない。

そんなときは、アゲアゲでダイブだ。


梅雨に入る前に、何とか由佳とテント泊のキャンプをしたい。

梅雨が明けるともう夏だから。

俺は季節に関係なく一年中キャンプしているが、やはり夏は日中は暑い。

キャンプ場はだいたい高いところにあるので、夕方からは涼しくなるのだが。

ということで、今のいい季節に行きたい。

由佳に電話してみた。


「この前言ってた泊りのキャンプに行かない?梅雨に入る前に行けたら行きたいんだけど。梅雨が明けたらもう夏で暑いし。」

「うん、行きたいな。お母さんには話してるよ。」

「何て言われた?」

「行って来たらって。」

「お父さんには?」

「私からは言わない。面倒なこと言いそうだから。」

「だよな、よく言うあれだな。」

「そう。でも、お母さんから伝わってるよ、絶対。」

「それで何も言わないならOKだな。」

「うん。そうだと思う。」

「じゃ、行こう。」

次の土曜日に決行だ。


由佳が初めて泊まるとなると、高規格のキャンプ場でないと。

シャワーも浴びれて、夜のトイレも安全で、使いたければ電源もある。

そう言ったら

「えっ?星の里じゃないの?」

「だから、あそこはシャワーもないし、トイレも遠いし。」

「キャンプに行ったらシャワーを浴びないなんて当り前じゃないの?」

思ってもみなかった答えが返ってきた。

毎日、風呂に入るかシャワーを浴びるかしないと気持ち悪いと多くの女子は思っているのでは?

由佳って意外にワイルドだな。

ますます気に入ったぜ。

「それに私、途中でトイレに目が覚めることなんかないし、もしあったら真ちゃんについてきてもらったらいいじゃない。」

うんうん、そう言われればそうだな。

「それよりあの満天の星を見たいの。ずっと見ていたい。」

そうか、そういうことか。

なら星の里で決定だな。


泊りのキャンプとなると時間が十分にある。

何をして楽しもうか。

のんびり過ごすのもありだけど。

何はともあれ、昼はバーベキューだ。


当日。

由佳を迎えにいく。

今までは駅だったけど、今日からは自宅へ。

ちょっと嬉しい。

由佳と一緒に出てきたお母さんに挨拶して、由佳を乗せたら星の里へ。

「今朝までにお父さんに特別な動きはなかった?」

「なかったよ、不思議なくらいに。今朝も何も言われなかった。」

「そうか。まあ、もう24歳だしな。」

「それ、どういう意味かな?24ってもうどうでもいい年ってこと?もうもったいなくないって?」

「いや、そうじゃなくて、もう大人ってこと。」

「ふーん。」

本気で言ってるわけじゃないだろうけど、すねた由佳もかわいい。

後で機嫌を取っておこう。


10時前にキャンプ場に着いた。

まずは水道をひねって水を出しっぱなしにする。

「何で?」

怪訝な顔をする由佳。

「ここは生水は飲めないって書いてあるだろ。でも、本当はそうじゃないんだ。この水は地下水でな、池の向こうで汲み上げてるんだ。」

俺が汲み上げている場所を指さす。

「で、地下の管を通ってここまで来てる。だから、長い間使われなかったら水が管の中で腐るんだよ。だから飲めないってことにしてるんだって。去年、ここでキャンプしたときに管理人さんからそう聞いたよ。地域の人は、その地下水を普通に飲んでるって。で、こうやって水道をしばらく流しっぱなしにしといたら飲める水になるんだって。」

「へー、そうなの。」

「でも悪いけど、飲もうとは思えない。でも、食材や食器を洗わせてもらいたいと思ってる。」


ゆっくりと設営を始める。

「まずはタープよね。私がペグを打つから真ちゃんはほかのことしてて。」

張り切って由佳が仕切り始めた。

どうせ打つ場所なんかわからないくせに。

次からは本当に一人で打って欲しいなと願いを込めて、由佳のプライドを傷つけないように教えて、ペグを打たせてタープを立てる。

「うん、私、いい仕事してる。」

満足そうな由佳を見て、俺も嬉しい。

その下にテーブルとイスを置く。


「じゃあ、テントを張るか。」

「うん、張ろう!教えて。」

俺のテントはワンタッチテントで、ひもを引っ張ると傘のようにパっと広がるタイプだ。

畳んでも大きくてかさばるのが短所だが、車に積むからそれは問題ない。

それよりも設営の簡単さを思えば、一度使うと手放せなくなる。

由佳にやらせてみた。

「このひもを引っ張るの?」

「そう、ぐっと。テントが広がってカチッて言うまでな。」

うーんと引っ張るが、なかなかカチッというところまで広がらない。

仕方なく俺が手を貸して引っ張って、やっとテントが広がった。

「もう少しで一人でできたのに。」

手を貸したことに不満そうな由佳。

「悪かったな。次は由佳に任せるから。」

「うん。次は全部私がするからね。」

何気に次のテント泊の約束をする。


何も考えずにテントを広げたが、テントはどこにあるべきか、改めて考える。

タープや車の近くがいいよな。

場所を決めたらアンダーシートを敷く。

「それ何で敷くの?」

「アンダーシートとかグランドシートって呼ばれるシート。テントの底が傷つかないようにするシート。テントの底が破れたら修繕が大変なことになるから。これが破れても、安く買い変えれるから。」

「へー、そうなんだ。」

「本当はこれの上でテントを広げるんだけど、もう広げちゃったから、この上にテントを移そう。」

軽いテントなので、由佳と二人で持ち上げて、入口の向きも考えてシートの上に乗せた。

「じゃ、ペグダウンだ。」

「待ってました。それ私の仕事。」

いつのまにか、由佳がペグ打ちの職人になっている。

「タープのときと同じだからな。ペグの角度は?」

「地面から45度から60度。」

覚えていて逆に驚いた。

ほんとに楽しそうだ。

「でな、まずこうやって、まず1本打つだろ。」

「うん。」

「そうしたら、次は、対角線のところへ行って、ぐっと強く外に引っ張って打つんだ。引っ張ったらテントの中がが広くなるだろ。」

「ああ、そういうこと。わかった。後は私に任せて。」

ペグを打つ音を背中に聞きながら、バーナーの準備をする。

テントの設営が終わったら、コーヒータイムにしよう。

「終わったよ。見て見て。」

できているのを見て欲しがるのがかわいい。

うん、合格だ。

フライシートを被せて、テントの設営は終了。

俺一人でやったら、ここまでの作業はほんの十数分もあれば終わるけど、いろいろ説明したり、由佳とやったり由佳にやらせたりしたら、結局1時間以上掛かった。


「あー楽しいね、キャンプって。」

まだ設営の途中なのに、本当に楽しんでいる。

俺が今日渡したまっさらなスノーピークのカップに口を寄せる。

前に花見にここに来たときに、帰りにショップに寄って買ったカップ。

キャンプでしか使わないからと俺に預けていた。

「うん、楽しいな。」

俺も、お揃いだがかなり年季の入ったカップでコーヒーをすする。

「次は何をするの?」

「とりあえずテントを張り終わったから、次は中だな。テントの中にインナーマットを敷かないと。そのままじゃ、地面の凸凹や小石なんかで痛いだろ。で、スリーピングマットを敷いて、その上にシュラフを乗せておくんだ。夜はそのままシュラフに潜りこんで寝るだけの状態までにしておいた方が楽だし。そうそう、テントの中に小さなランタンも吊るしておかないと。」

「へー、いろんなものがいるんだね。え・・・真ちゃん、それ、私の分買ってくれてたの?」

「うん。」

「ありがとう。ごめんね、キャンプに行くのに私の分の道具がいるってことに全然気が付かなくて。」

「なんで。由佳がキャンプを気に入ってくれて一緒にキャンプできるんだもの、こんなの全然どうってことないよ。選ぶの楽しかったよ。」

「私が楽しいからついて行ってるだけなのに。」

「それが嬉しいんだ。」

「本当に、キャンプ、楽しいよ。連れて来てくれてありがとう。」

「うん。これからももっと行こうな。」

「うん。」


設営の続きをする。

「どうでもいいようでどうでもよくないのがゴミ袋なんだよな。」

「そう、ゴミ袋って案外馬鹿にできないのよね。何かしたらゴミって出るし。」

「そう。自立するスタンドがいるんだよ。ごみを捨てるたびに袋の口をあけるのもな。袋が飛んで行ってもいけないし。」

「それ便利ね。安定して立ってるし、畳んだらぺっちゃんこになるし。」


「日が暮れだしたら暗くなるのが早いから、夜のためにランタンをもう用意しておいた方がいいんだ。ガソリンや灯油やガスのランタンもあって、情緒はあるんだけど、扱いが難しいしメンテナンスも大変。だから俺はもっぱらLEDのバッテリーランタン。今のバッテリーランタンって明るいんだよ。暖色系もあるし。それに、上から照らせるのが強み。これはガソリンやガスのランタンじゃできないから。」

ランタンスタンドを2つ置いて、ジェントスの大きなランタンをテーブルの上を照らせるようにに下向きに掛けた。

これで、暗くなっても安心だ。


お腹がすいてきたなと思って時計を見たら、12時過ぎ。

バーベキューの準備に取り掛かろう。

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