由佳とデイキャンプ2
今日は、運転免許の更新に運転免許センター来ている。
俺は、優良運転者ではないので、一時間の講習を受けなければならない。
目をつむっていたら注意されかねないので、目を開けたままダイブする。
今日は、由佳とデイキャンプに来ている。
キャンプ場とは言うけれど、水が飲めない水道とトイレがあるだけの大きめの広場といったところだけど。
そう言えば、パンツルックの由佳を見るのは初めてだな。
初めてキャンプ場というところに来た由佳は、ハイテンションになっている。
「岡山の中心近くから30分くらいで、こんなとこに来れるんだ。芝生がきれいねー。大きいね、あの池。あっ、鳥。ちょっと見てきていいかな。」
設営は俺の仕事なので、手伝わなくていいから、いろいろ見ておいでと言ってある。
まずはタープを張る。
手伝ってくれたら少し楽だけど、ソロが多いから一人で張るのに慣れている。
由佳が帰ってきた。
「いっぱい鳥がいたよ。わー大きいね。屋根だね。」
「タープって言うんだよ。これがないと暑いし焼けるから。・・・由佳って、日焼けするの?」
由佳の白い肌が気になった。
「うん。焼けるって言うより、赤くなるの。何日か熱くなったまま痛いんだよね。」
「そうだと思った。僕だけのときはタープは張らないんだけど、持って来てよかったよ。」
「ありがとう。じゃ、一人のときは、焼き放題?」
由佳がおもしろそうに聞く。
「いや。一人ならあの木の下で十分」。
枝葉がよく茂った大きな木を指さす。
「あの木の下って気持ちよくて、つい寝ちゃうんだよな。特に一杯飲んだ日には。」
「わー、いいな。私もあの木の下でくつろぎたい、寝てみたい。まさにアウトドアだ!」
由佳がはしゃぐ。
昼ご飯にはまだ早い。
キャンプ場にほど近い、小高い山の山頂近くにある神社に由佳を誘った。
坂道で、思った以上に距離もあって、神社に着いたときには汗だくになっていた。
「ここはね、天から3つの星が落ちてきたんだって。」
「いつごろのこと?」
「天武天皇のころ。いつごろかは古代史研究家の由佳ならわかるよな。」
「研究家じゃないよ。ただの古代史ファン。それって、飛鳥時代よね。」
「そう、飛鳥時代。壬申の乱が無難にすまぬで672年だから、その後、天武天皇が皇位についてから後のことだね。」
「古代史大研究科の真ちゃんが言うんだから、間違いないね。」
言い返された。
「大研究家って何?僕もただの古代史ファンだし。」
その後、いわれの書かれたものを見て、へーっとなる。
そして、天から落ちてきたとされる3つの星を拝顔。
大きい。
まさに岩だ。
こんなの落ちてきたとしたら、大気圏に入る前の大きさってどれくらい?地面に落ちたときのインパクトは?なんて考えてしまうのは職業病か。
キャンプ場に戻ったら、
「そうだ。」
由佳が何かを思い出したようだ。
「この前、真ちゃん、ブログしてるって言ってたよね。」
「えー、覚えてたの。忘れてくれてよかったのに。」
「忘れないよ、そんなおもしろそうなこと。で、何て言うブログ?」
「あんまり教えたくない。」
「なんでよー。私に見られたら恥ずかしいようなこと書いてるの?」
「そうじゃないけど。やっぱり恥ずかしいよ。」
「いいじゃない、教えてよ。」
こうなった由佳は絶対に折れないことが、まだ短い付き合いながらわかっている。
「ん~。しかたがないな。『メタの独り言』。アメーバブログ。最初はヤフーブログでやってたんだけど、ヤフーブログが終わっちゃったから。」
「わかった。ちょっとだけ見ていい?」
「今?」
「うん。」
「それは・・・まぁ、いいか。」
由佳がスマホで検索する。
「あった。メタの独り言。」
ブログを読むと言うより、ブログの特徴を見ているようだ。
「へー。いろんなテーマで書いてるのね。キャンプ、旅行、パソコン、食、神社・・・。どれも面白そう。帰ってゆっくり見よう。」
「今度新しいテーマを付け加えようって思ってるんだ。」
「何?」
「由佳。」
「もう、本気で聞いて損した。」
いい時間になったので、昼ご飯に。
由佳が、三段重ねのお重を広げる。
鶏の唐揚げに夏野菜やエビのてんぷら、カットされた牛テキ、ピーマンの肉詰め、サーモンのムニエル、玉子焼き、ポテトサラダ、ミニトマト、イチゴ・・・。
「どれも美味そう。そう言えば嫌いなものは聞かれたけど、好きなものは聞かれなかったよな。なんで僕の好きなものがわかるの。」
「さぁ、何ででしょう?」
由佳が優しく微笑む。
「あ、今までに一緒にご飯食べたのからわかった?」
「ブブー、違いまーす。」
「じゃ、何?」
「わからない?」
「うん。」
「ほんとにわからない?」
「うん。」
少し照れながら
「じゃ、教えてあげます。それは、私が真ちゃんの彼女だからです。」
そんな答えされたら、普通でいられなくなる。
これは、もうだめだ。
何も聞かずに、由佳をぎゅっとした。
池の方から鳥たちが見ていた。