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ようこそ妄想の世界へ

趣味は?と聞かれたら、キャンプと読書。

近い人なら、アニメも付け加える。

でも、本当は、もっと長い時間を掛けて楽しんでいる趣味がある。

というより、少しでも時間があればその趣味に没頭する。

でも、それは絶対に誰にも言わないし、誰にも言えない。


俺の名は桐島真。

59歳の高校教師。

生物が専門の理科教師だ。

大学を卒業する前に教員採用試験に合格し、卒業とともに教諭としての教員生活を始めた。

30歳のときに7つ年下の妻と見合い結婚。

二人の息子に恵まれた。

今年の春、下の子が就職して家を出て、妻と二人の生活になった。


仕事は小過はあれど大過なく勤めてきた。

夫婦仲もよく、二人でよく出かける。

親の遺産が入り、老後の心配はない。


これで自分の人生に不満を言ったらバチが当たるだろうが、どうしても悔いが残ることが一つある。

もう、今となってはどうすることもできないことはわかりきっているのに、それでもあきらめきれない。

街で若いカップルを見かけるたびに、胸が痛くなる。


俺の一つだけの後悔。

それは、彼女と付き合ったことがないこと。

妻とは結婚前にはよくデートしたが、人の紹介だし、始めから結婚ありきだった。

そうではなく、本当の恋愛。

何かをきっかけに出合い、付き合ってくださいと告白しての交際。

これをしたかった。


還暦手前の男がこんなことを言ったら笑われるだろうし、笑っていただいて大いに結構。

でも、本気でそう思っている。


そんなことできるのか?自問したら、できるわけないだろと答える。

現に妻がいるし、そんな相手はいないし、今後も現れる可能性は限りなく0に近い。

反対に、そんなことが起こったら大事になる。

そこまで、きちんと理解している。


でも・・・。


ならば、と俺が辿り着いた答え。

それは妄想である。

通勤に車で片道一時間。

まとまったいい時間だ。

そこで俺は彼女に出会った。

そして、仕事から帰って寝るまでの空いた時間や病院での待ち時間、休みの日、俺は妄想で彼女とデートを重ねている。

かなり設定もリアルで具体的になっている。

困ったことに、最近、どうも妄想と現実の境があいまいになってきている。

妻と車で出かけた際に、由佳が勤める会社の看板を見つけ「あっ、由佳の会社」と言い掛けて慌てて口をつぐんだ。

危ない、危ない。

「由佳ってだれ!」

となったら面倒だ。

由佳の卒業した高校や大学、最寄り駅。

近くを通るたびに胸がきゅっとなる。


今日も車のエンジンを掛けたら、由佳の待つもう一つの世界にダイブだ。


お読みいただいてありがとうございます。

今日から、連載を始めます。

よろしければ、ご感想をいただけますと、大変励みになります。

今後とも、よろしくお願いいたします。

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