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第16話 殺害
「表彰するところだが――」
と身勝手国王が俺を見る。
続けて
「全員が無事に帰還できたわけではない。
異世界から召喚した助っ人は、残念ながら命を落とした」
国王が言う。
――は?
騎士が俺を引きずっていく。
「抵抗するな」
命令が出た。
――イミガワカラナイ。
そして密かに殺された。
水の中にいた……ような気がする。
狭い場所をくぐって通り抜けた……ような気がする。
息ができない……ような気がした。
――くっ……くるしい……! 息……息を……!
「おぎゃあ! おぎゃあ!」
肺が動く。
息を吸い込む。
吐き出すと同時に、声が出てしまう。
声帯を開いたまま息をすることができない。
だが、しばらく続けていると、だんだん出来るようになってきた。
「うう……?」
なんだ……? 何が起きた……? ここはどこだ……?
目がよく見えない……。
何がどうなったんだ?
「ブラオ……私のかわいい赤ちゃん」
「ブラオ~。父さんだぞ~」
近くで声がする。
若い……20代ぐらいの男女だ。
ブラオ? ブラ男だと? 19年ぶりに呼ばれたぞ。




