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ブラオと奴隷の首輪  作者: うさぎレーサー
第1章「犠牲編」
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第10話 昏倒と教会

 旅は続く。

 ナス以外の魔物とも数多く戦うことになった。

 どうも野菜系の魔物は一番弱い部類のようで、その次が草系、その上が樹木系という具合に感じられた。

 動物系と戦ったのは、樹木系の後だった。動きが急に素早くなったものの、AGIは俺のほうが圧倒的に高いので問題なく撃破。


 結局のところ作業ゲーなのは変わらないので、俺のほうもだんだんと動きが洗練されていく。

 自分の動きの中に無駄を見つけて省いていくと、だんだん武術家っぽい動きになってきたように思う。魔物が動き出す瞬間に合わせて、回避と攻撃を同時にこなすようになった。

 攻撃してくる瞬間というのは、それ以外の動作ができないらしく、面白いようにカウンターが入る。

 なんやかんや、ここまで木の棒だけで戦えてしまった。


 そんな中、問題が起きたのは2度。

 3日目と30日目だ。

 3日目、俺が倒れた。脱水によるものだ。飲まず食わずだったので当然である。もらった100Gも、店に立ち寄る行動を許されないので使う暇がなかった。起きている間は戦い続け、王子が眠る間だけは俺も眠る。騎士たちが交代で夜警に当たるが、魔物が来たら俺も蹴り起こされた。


「何がおきた?」


「勇者が倒れました」


「なぜだ? 敵の攻撃か?」


「いえ、攻撃も、敵の気配もありません。

 原因不明です。突然倒れました」


 なんて会話が聞こえてきたので、王子も騎士も(こいつら)揃ってポンコツしか居ねぇ……と呆れながら気絶した。

 結局、最寄りの町に運ばれ、教会で手当(飲み食い)を受けて回復したが。


「飲食が必要だと? なんと世話の焼ける……異世界人もたかが知れているな」


 ぶつくさ言いながら、王子はテーブルいっぱいの食事を手づかみで食べて、ほとんど残していた。そのあと騎士たちがテーブルについて手づかみで食べていたが。

 ……ナイフとかフォークとか無いんか、この世界は。

 ちなみに俺が食べたときはスプーンがついていたので使った。手づかみって……。しかも自分たちだって食べてるのに、何言ってんだ、こいつ? と思った俺は何も悪くないと思う。教会の人も「えぇー……」と言いたそうな顔をしていたし。


 一方の30日目。

 この時も俺は倒れた。

 騎士が蹴って起こそうとしたが、俺は起きなかった。


「何なんだ」


「分かりません。眠っているように見えるのですが、蹴っても起きません」


 て事で、また近くの町の教会へ運ばれた。


「【ヒール】……駄目ですな。効果がありません」


「回復魔法でも治らんとなると、病気か?」


「かもしれませんが……」


 と教会の人が言い淀む。

 ちなみに「僧侶」と呼んでいいのか、よく分からない。

 個人名にしろ役職名にしろ「〇〇さん」的な「呼びかけ」は、それ自体が「特別な価値のある行為」として扱われているようだ。物資の補充に立ち寄った店で「おい、そこの店主」と呼びかけられた店主が、続けて問いかけられた内容に答える前に「王子殿下にお呼びかけいただく光栄に浴しまして身に余る光栄なんちゃらかんちゃら」と述べていた。

 そんなわけで、王子や騎士たちは教会の人に対しても「呼びかける」ことがない。いきなり用件から話し始める。まるで田舎のジジババの電話みたいだ。名乗ることも呼びかけることもしないで、誰が誰に話しかけているのか通じるものと思い込んで動いている。周りもそこに忖度するのが、ここでの文化らしい。


「『が』なんだ?」


「見た所、ただの過労ではないかと」


「過労ぉ……? なんという……異世界人はこうもたるんでおるのか」


 貧弱な奴め、と言わんばかりに王子。

 しかし、王子がグースカ眠っている間も、騎士たちが交代で眠っている間も、俺は何度も蹴り起こされて夜襲に対応しているのだから、まともに睡眠がとれないのだ。


「目覚めるまで眠らせておけば、長くても12時間かそこらで目覚めると思います」


「チッ……仕方ない。宿を取れ」


「はっ」


 と、そんな感じで、教会の人の進言によって俺は30日ぶりにまとまった睡眠をとれた。目覚めたとき、教会の人がやたら同情的だったのが印象深い。宿屋に行ったのは王子と騎士たちだけで、俺は教会に捨て置かれたのだ。教会の人も俺がどんな扱いを受けているのか察したことだろう。

 あと、「僧侶」と呼んでいいのか尋ねたら、階級ごとの名前はあるものの、総じてどう呼ぶという名称は無いとのことだった。その階級の名前というのが、教会にいる人なら「教会員」と呼べば問題なく、教会の責任者は「教会長」と呼ぶらしい。

 なんだろう。支店長と従業員みたいな? まあ、分かりやすいのは助かるけども。

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