異世界転生強制離脱のやり方
ただの一般人、岡田平一(俺)は、ただの一般農民に転生するはずだった。しかし、正規の方法で転生しなかった彼の身には、ある異変が起きていた。
「岡田、この資料、上にまわしとけ」
上司に渡された資料を見ながら、一瞬の思考。
会社で働く
なんの変哲もない平社員として生きる。
俺の名前は岡田平一、独身で、親しい人はいない。
会社でも使いっ走りみたいなもんだ。
帰宅
そして寝る
起きる、働く、帰宅、寝る
明日も、というかこれからずっと同じことを繰り返す。
つまらないな、いっそ脱サラでもしようかな。
「おい、なにぼーっとしてんだ。働け。」
夢をかき消すかのように、上司の現実的な声が響いた。
帰宅
同じような姿の人たちと帰りの電車を待つ。
この薄暗いホームから帰って、また変わらない日々を過ごす。
...はずだった。
電車が近づいてくるとともに、だれがが俺の背後に走り寄ってくるような気配がした。
「危ない!」 ドンッ
周りの人の叫びに対応するまもなく、酔っ払いがいきなり俺にぶつかった。電車のレールを見ていた俺は前につんのめった。
いきなり線路に落ちた俺に、電車がブレーキをかけることはなかった。
「…い、…ください、起きてください、起きてください」
機械的な声がする。寝転んでいたらしい。うっすらと目を開けると、空港のような天井が見えた。ここは、どこだ。
「痛っ、何してたんだ、俺?」
長く寝過ぎた後のように痛む頭をおさえながら、身を起こした。確か、酔っ払いにおされて、それで...
!
「そう。あなたは死んだのです。...あ、にゃ。」
上から声がした。おれの驚く顔から察して話したのだろう。独り言に答えた相手を見上げると、それは白髪で猫のような耳をもつかわいらしい女性だった。会社員のような服をきている。
「ここは..」
俺が問うとその人はにっこりと笑って
「女神世界港へようこそ!」
とこたえた。猫の語尾が無いあたり、無理やり演じているのだろう。
「空港?」
あたりをみまわすと、空港のような空間が広がっていて、様々な人がいる。皆それぞれ違う服を着ていて、中には侍のような格好をしている人や、ゲームにしかないような服を着ている人もいる。さらにみんな、1人ずつ、俺についているように会社員の制服をきた人がついているようだ。
「ここは、死んだ人が様々な世界に転生する場所ですにゃ。」
猫耳が話しかけてきた。何度も言ったセリフらしく、手慣れた様子。
「そんなことあり得るのかよ、まじか。」
まてよ、俺の中である想像が膨らむ、
「じゃあ俺は無双して楽な異世界ライフを、」
「できません」
途中で話を遮って猫耳が答えた。にこやかな表情だが、有無を言わさないような迫力がある。それでもやはり不満だ、今の混乱した心もあいまって質問の語勢はつよくなる。
「じゃあ俺はどうなるんだ?そもそも転生って女神とかがやるんじゃないのか?なんでこんな無理やり猫耳なんだよ?」
文句も混じったような子供っぽい質問がついつい口に出てしまう。無理やり猫耳という言葉が不快だったのか、少し怒ったように猫耳が答える。
「最近は転生者が多くて女神様1人じゃ手に負えないんです、、にゃ。あと」
「にゃって言わなくていいから!猫耳さん。かわいいアピールかもしれないけどあんまり可愛く無い。」
横から遮る。すると、猫耳は怒りからか顔を赤くして
「話は最後まで聞いて!これは人気を出して昇進するためのキャラづけなの!
あと私の名前は猫耳じゃなくてコル。テア・コルです!
猫耳は飾りです!」
そこまでいうと、少し落ち着いて、
「改めて説明させていただきます。近年、転生者の増加によって女神様の負担が増加し、より円滑に転生を促すようになったのがこの世界港です。世界港は空港みたいなものです。」コルは説明を続ける。
「あなたがこれから行く世界は、人以外にも様々な種族が生きる異世界です。あなたは、そこである村の村人として生まれてもらいます。」
コルはなおも流暢に話を続けている。それは、異世界転移する方法や、それに伴う記憶の消去の手順のようだったが、そんな事はどうでもよかった。これで、退屈な生活ともおさらばできると思ったが、結局はまた同じような生活をすることになるのかもしれない。そう思うと、何も聞く気になれなかった。コルは、俺のそんな様子を見て
「何をぼーっとしているんですか、聞いてくださ…」
突然喋るのをやめたコルを見ると、驚いた顔をしている。
コルの右手は、鱗のついたかぎ爪のある黒い手につかまれていた。しかし、手の持ち主はいない、真っ黒い穴が虚空に空いていて、そこから伸びている。手はそのままコルを黒い空間に引っ張り込もうとした。
「え…。」
俺が驚いいる間にもコルは、黒い空間に引っ張りこまれそうになっていた。
コルは、恐怖で泣きそうな顔をしながら、俺に手を伸ばし
「た、助けて…。」
あまりに怖いのだろう。声が上ずっていて震えていたが、はっきりと聞こえたその声に、反射的に体は動いていた。
コルの左腕を取り、思い切り引っ張った。
「い、痛い!」
コルが叫んだ。
俺の全力を使って引っ張った。おかげでわずかにコルが俺のほうへ動いた。が、俺ごと引っ張りこまれ、真っ暗な空間に、引き込まれてしまった。中は暗く、何も見えない。さらに、水で満たされたようになっていて、息もできなかった。それでももがく内に、突然、水にまとわりつかれるような感覚がなくなった。助かったのか、そう思う内に意識が薄れていった。
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