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甘くて苦くて、やっぱり甘い  作者: 佐藤sugar
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4話 チョコレートとメッセージカード

 決意したのは良いものの、何を作ろうか迷ってしまう。去年まではチョコレートやクッキーなどを作っていた。だが、関係が悪化しお互いを避けあっている今、例年通りのものを上げるのも何だか違う気がする。何を上げたら仲直りできるのだろう。やはり高価なものが良いのではないか。そうなると手作りではなく、有名なブランドものを購入し──────。


「つむぎー、高ければいいってわけじゃないわよ。チョコはきっかけでしかないからね。大事なのはチョコをあげた後よ」


 思案にふけっていると、自分の思考を遮るように母の声がリビングから聞こえてきた。どうしてこうも私の考えを見透かしてしまうのか。


「……ありがと」


 いつもなら余計な口を挟む母に対して恨み言の一つや二つ言っていたが、今回ばかりは助かった。危うく手段と目的を取り違うところだった。

物を上げるから仲直りするのではない。ものをきっかけとして仲直りにつなげる。それがチョコレートを作る目的だ。

 板チョコを溶かし、型に流して固めたものにしよう。シンプルなものだが、選んだのには理由がある。それは、私が渚に初めてあげたチョコだったからだ。単純な作業だったのにも関わらず、歪な形になってしまい、泣いたことを今でも覚えている。これをあげるのが一番しっくりきた。

 何を作るかを決めてからは、思いの外早く時間が過ぎていった。材料を買い、調理に取り掛かる。お菓子作りなどの料理は昔から苦手だったが、渚にチョコをあげたいという一心で練習した。そのおかげで、今では料理の腕には自信があるのだ。


「できた……!」


 ラッピングに問題がないか確認しながら、カレンダーに目をやる。バレンタインは明日である。今もうずくまって泣いていたら、絶対に間に合わなかった。

 あとは、メッセージカードを書くだけである。しかし、そこからが長かった。


“この前はごめんなさい。渚と離れ離れになるのが嫌で、あんなことを言ってしまったの……”


 言い訳がましいことが書かれたメッセージカードに私は頭を抱えた。今までは『これからもよろしくね、ずっと一緒だよ!』ぐらいだったのだが、さすがに謝罪の一言がないのは失礼だろう。そのうえ、渚が県外に行ってしまい、ほとんど会えなくなると思うと最後の最後くらいは本音も伝えたくなる。

 しかし、自分の心の声をありったけに書き殴ると、どうしても気持ち悪い謝罪文や重いラブレターのようになってしまう。これでは渚に迷惑ではないのかと不安になるのだ。すでに時刻は日付をまたいでおり、このままでは明日、目の下にクマを作ったまま渚に渡すことになる。


「これしかない」


 悩んだ末に私はなるべく短く簡潔に言いたいことを書くことにした。合っているのか分からないけど、これ以上の言葉は思いつかなかった。


“渚の気持ちも考えずに酷いことを言ってしまってごめんなさい。許してとは言わないけど仲直りがしたいです。大好きだよ渚”

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