1話 突然の告白
私には、一条渚という幼馴染がいる。
幼稚園の頃からいつも一緒で、喧嘩することもあったけど、ずっと親友だった。そう、彼女は思っているだろう。
でも、私は違う。幼稚園の頃からいつも一緒で、喧嘩することもあったけど、ずっと大好きな人だった。それが私の思いだ。同年代の女子たちは皆、カッコいい先輩に夢中だったけど、私はいつも手を引っ張って、リードしてくれるカッコいい渚に夢中だった。渚以外の人を好きなったことなんて今まで一度も無い。
だが、中学校生活最後の年、私は信じられない言葉を彼女の口から聞いた。
「私、県外の高校に進学しようと思うの」
「え、でも……、二年生の頃は一緒の高校に行こうって……」
「私、やりたいことが見つかったんだ。夢ができたの」
宝物を見つけて自慢する小さな子供のように渚は笑った。好きな人が夢のために頑張るのだ。嬉しくないなんてことはない。だけど、その時はなぜか、笑えなくて、視界がぼやけていた。
高校も一緒に行って、いつも通り他愛もない話をして、一緒に下校する。それが当たり前だと思っていたのは私だけだったらしい。それを知ったとき、心の奥底で何かが崩れ落ちる音がした。
「だから、高校は一緒に行けない。でも───」
「約束したのに!」
渚の言葉を途中で遮る。裏切られたような気分になり、私は絶望した。なぜ三年生の最後になって言うのか。私に本当のことを隠しておいて、二年生の時は嘘をついていたのか。色んな思考や憶測が頭の中をかき回し、ぐちゃぐちゃになる。頬を何かが伝っていく感触、歯ぎしりする音。もう、渚の顔さえも見れなくなってしまった。
「待って、紬!」
後ろから私を呼び止める渚の声が聞こえるが、私は聞こえないふりをしてその場を小走りで去った。
それから2か月がたったが、あれ以降私は渚と一回も話していない。
あまり長い話ではないですけど、最後までお付き合いください。