表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/16

王太子ネブガドネザルの要求

 早速、ニトクリスと私は王太子・ネブカドネザルに会いに行く。

 「ニトクリスよ、その者は?」

 「この方は遥か彼方の地・メルッハからお越しになった方です」

 「それより、父王に寄越せと言っていた『超絶優秀な補佐官』はまだか?」

 「この方です」

 (えっ。私は『超絶優秀な補佐官』なんですか!? 期待大き過ぎない!?)

 「うむ。ならば話を聞こう」

 雰囲気からして、父王よりも強い野心が見える。

 「早速本題に入りますが、何を目指していますか?」

 何を目指すかを訊いてみない事には話が始まらない。

 「都市とは、国そのものである」

 「加えて、我が国は世界帝国となるべきなのだ」

 「よって私は、アッシリア国都ニネヴェを超える都を作らねばならないのだ」

 まあ、まずは『何をするにせよ必要なもの』を挙げておこう。

 「では、まずは人材ですね」

 「人材? 資材ではなくて?」

 「私の故郷(ふるさと)には、人は(まち)、人は石垣(じょうへき)という言葉がありまして」

 「人あっての国という事じゃな」

 「左様にございます」


 * * *


 「皆の衆、バビロンを富ませるには如何にすべきか、忌憚(えんりょ)なく意見を述べよ!」

 ここに集められたのは都市計画家か。灌漑の充実、交易路の保護、徙民政策の実施などの意見が出される。

 「そこの異邦人、何か意見を述べよ」

 突然の指名に驚いたが、一応用意はしてある。

 「新居住区とそれに伴う外壁の建設、河川交通と宗教建築(ジグラット)の拡充あたりでしょうか」

 「案が一番固まってそうじゃな、他には」

 他といっても、大抵はここの都市計画家たちと同じなのだが。

 「やはり、最重要事項は食糧確保にあるでしょう」

 世界の文明発展は常に食糧生産と共にあった。農業革命があって、世界が動く。食糧の効率的生産は文明の質であるといっても過言ではない。事実、後に高効率化に成功した中国・インドにバビロニアの流れを汲む西洋世界は追い越され、それを西洋世界は新作物によって追い越し返し、産業革命を実現したのだから。

 「なるほど、貴殿に都市設計を任せるとしよう」

 「明日、粘土板(せっけいあん)を出せ」

 無茶苦茶だ。古代国家の朝は早い。夜明けと共に政務が始まる。つまり、今が午後5時であるから、夜明けの5時までに仕上げねばならない。粘土板を乾かす時間を含めれば、12時間という時間すらない。

 急いでバビロン市内の統計を取って、現状を把握せねば。

 「お困りのようですね」

 誰かと思えば王太子秘書ニトクリス。

 「期限を延ばすよう掛け合ってみましょうか?」

 ここで私はつまらぬ見栄を張った。美子に激似だからといって、こんな事をすべきではなかった。

 「いや、少し助けがあれば今日中にできますよ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ