第341話 プロローグ ~放浪の闇ヒーラー~
新章開始します~
【前章(8章)のあらすじ】ゼノスは魔竜王ガルハムートを倒し、聖女と王国を救った
空は高く、青く、澄んでいる。
黄金色の稲穂を湛えた畑が道の両側に広がっており、吹き渡る風に穏やかに揺れていた。
涼やかな気候の中、七色の羽をした鳥が、高く鳴きながら優雅に宙を舞っている。
「ゼノス、あの鳥なぁに?」
「えーと、虹色鳥だな」
隣に座るエルフの幼女――リリの質問に、ゼノスは陽射しに手をかざしながら答えた。
座席は道のおうとつに合わせて、緩やかに振動している。
二人は馬車に横並びに座っていた。
「虹色鳥はこの時期、餌を求めて西方の大陸からやってくるんだ」
「へぇ、綺麗な鳥だね」
「そう思うだろ?」
「違うの?」
「羽から鱗粉みたいなのが出ていてな。遠くから見ると太陽光を反射して七色に輝いているように見えるんだけど、実は近くで見るとどす黒い色をしてる」
「ええ」
「しかも、体臭がすこぶる臭い」
「そうなんだ……」
「なるほどのぅ」
もう一つの声がリリの抱えている古びた杖から響いてくる。
杖に宿っているレイスのカーミラだ。
「遠くから見るとすごい美人だと思ったが、近づいてみるととんでもない厚化粧の香水臭い貴族の中年女子じゃった、みたいなものか」
「めちゃくちゃ怒られそうなたとえをするな」
ゼノスは杖を見て嘆息した後、再び空に目を向けた。
「でも、久しぶりに見たな、虹色鳥」
「王都にはいないもんね」
リリの相槌とともに、馬車の御者が馬に軽く鞭を入れながら尋ねてくる。
「兄ちゃんたち、外国人かい? どこから来たんだ?」
「ああ、ハーゼス王国から来たんだ」
ゼノスが答えると、御者が明るい声が応じた。
「ああ、話題の王国か。なんでもどえらい魔物が現れて、それをたった一人の英雄が倒したっていう噂だよな」
「うん、まあ、なんか……それっぽいことがあったらしい」
「どうせ話に尾ひれがついてるんだろ?」
「ああ……そうだろうな」
「はっ、噂ってのはそんなもんだよな」
御者はからからと笑って、後ろを振り返った。
「まさか兄ちゃんがその英雄だったりしてな」
「いや、まさか……は、はは……」
ゼノスが乾いた笑いを漏らす横で、リリが苦笑し、杖から含み笑いが漏れてくる。
ゼノスは肩をすくめて、背もたれに身を預けた。
「……まさか国を出ることになるなんてな」




