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第329話 魔王の思惑

前回のあらすじ)宿の女主人は勇者たちの姿に希望を見出した

 その漆黒の城は、魔族の本拠地でもある南方大陸の北部に屹立していた。


 年中薄暗い空にはいつものように暗雲が厚く垂れこめ、雷鳴が轟いている。


 稲光が明滅する中、冷たい石造りの廊下を、一体の青白い瞳の高位魔族が歩いていた。


「魔王様。報告です」


 鉄の扉を開いて言うと、真っ暗な空間から返答があった。


「どうした、メフィレトよ」

「軍幹部の獄魔のガグレオですが、おそらく死んだものと思われます」

「……なんだと?」

「もう半年以上所在が不明で、魔力探知にも全く引っかかりません」


 これまでも自由行動の多い輩ではあったが、最低でも二月に一度は幹部会に参加していた。これだけの期間所在が不明ということはおそらく生きてはいないだろう。


 そして、ガグレオほどの高位魔族ではないが、この一年ほどで行方がわからなくなっている魔族が増えている。 

 

「おぉ、なんということだ……」

「では、報告は以上です」

「待て、メフィレト」


 声をかけられてメフィレトは足を止める。


「不滅のメフィレトよ。お前は、ガグレオや同族の死を知って何を思った」

「ガグレオについては敵を見くびる癖がありました。おそらくそのせいで隙をつかれたのではないかと」

「そうではない」

「……敵を甘く見たとはいえ、ガグレオは強者です。あれを倒せるほどの人間がいるということになるので、警戒を強める必要はあるでしょう。他の魔族についても同様です。人間はかなり追い詰められているはずですが、ここにきて抵抗を強めている可能性があります。我々が見落としている戦力があるかもしれないので、調査が必要かと」

「そうではない」

「……」


 大魔王ハデスの冷たい言葉に、メフィレトは口を閉ざす。


 一片の光すら通さぬ闇の中から、魔王の声が響いてくる。


「お前は私の腹心でありながら、いまだ私の真意を理解していないようだ。仲間が死んだのだぞ。まずはその喪失を悲しまねばならん」

「悲しむ、ですか……」


 人魔戦争以来、友人や親や子の死を前にして泣き崩れる人間の姿を何度も見て来た。 


 だが、少しも理解はできなかった。


 死は、文字通り、ただの死である。無に還ったものにどんな思いを持てというのか。


 そもそも魔族にあるのは、快か、不快か。それだけだ。


「私はね、メフィレト。大きな力を持って生まれてきた。当時は何も考えていなかったよ。ただ力を好きなように行使し、目に入るものを戯れに滅ぼした」

「はい」

「そのまま数百年が経った。ある日、北の大陸から、高名な魔導師とかいう人間がやってきた。私のことをどこかで聞いたようで、いずれ人類の脅威になるだろうと倒しにきたのだという」

「魔王様をですか? 無謀ですね」

「無論、取るに足らない相手だったが、死の間際、その老人は私を指さして言った。その力を怖れ、誰もお前に近づいてこないのだろう。たった一人の仲間もいない。孤独で、悲しい、寂しい生き物だと」

「……」

「孤独。悲しみ。寂しい。何を言ってるかわからなかったが、なぜだろうな。力では圧倒できたが、その枯れ枝のような老人に、私はどこかで敗北感を覚えたのだよ」

「だから、魔王様は仲間を沢山作ることにしたんですよね」

「そうだ。まずは魔族をまとめ、南方大陸を一つにした」  

「そして、次は北の大陸という訳ですね」


 暗闇の中で、大魔王はゆっくりと頷いた。


「私はこの世の全てと仲間として繋がっていたいのだよ。一体の例外もなくね。そうすれば孤独でもなく、悲しくもなく、寂しくもないだろう」

「ですが、魔王様の力を前に、魔竜族のように敵対してくる者や、人間のように怖れ逃げ惑う者もいます」


 普通の人間は、魔王の近くにいるだけでその強力な魔力の波動で、命を落としてしまう。


 メフィレトが答えると、大魔王ハデスは薄く微笑んだ表情を作って言った。


「だから魔竜族のように、仲間になることを望まぬものは全て滅ぼすのだ。そうすればいずれこの世に存在するのは、私の仲間だけになるだろう。全てが仲間。それこそが私の望む素晴らしい世界だよ」

素晴らしい世界


アニメは本日6/19(木)第12話が最終話となるので、よろしくお願いします!

本来この番外編はアニメとともに終了予定だったのですが、思ったより長くなってしまったので、あともう少しだけ続く予定です。こちらはもう少しお付き合い頂ければ…!


そして、アニメここまでお付き合いありがとうございました!

原作アニメが毎週テレビ放送されるという非日常でしたが、楽しい日々でした。

応援頂いた皆様のおかげです!あと1話お楽しみ下さい~。


【地上波】

TOKYOMX:毎週木曜 23時30分~

BS11:毎週木曜 23時30分~

サンテレビ:毎週木曜 24時00分~

KBS京都:毎週木曜 24時00分~

【地上波同時・先行配信】

ABEMA・dアニメストア 毎週木曜日23時30分~

その他、各配信サイトにて順次配信開始


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また、闇ヒーラーのウェブトゥーン版「クレスフォール潜入編」というオリジナルストーリーも是非!


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また、十乃壱先生による続々重版のコミック4巻も大好評発売中です!


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アニメは2025年4月3日(木)より放送中です。

本作の公式X、公式サイト、PV公開中です。


★★★★★★

公式Xのフォローを是非宜しくお願いします。またアニメでお会いしましょう!!

★★★★★★


挿絵(By みてみん)


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― 新着の感想 ―
魔王とか妖魔と言うのなら魔法を使ってほしい。 魔法を使うのはヒーラーさんだけだし。 弱い相手が使う魔法は、火とか氷とか衝撃波とかの物理攻撃だけでつまらないです。
なるほど、敵を滅ぼせばみんな仲間、と。 それで勇者は魔族を滅ぼすことにしたんですね(笑)
最近アニメ放送も短くなったのでカットされる部分が多く、物足りないし残念だよな。 まあ、「アニメ化されただけでもヨシ!」と思おうか。
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