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第127話 金ならあるぞ

前回のあらすじ)大幹部の情報を賭けた【情報屋】ピスタとの賭博勝負はゼノスの勝利で終わった

 ここでは人目があるからと、一同はカジノの裏にある事務所へと場所を移すことにした。


「さて、それじゃあピスタに話してもらおうと思う」


 リンガが水を向けると、ピスタは何度も周囲を確認した後、諦めたように口を開いた。


「地下ギルドの大幹部に、闇ヒーラーちゃんのお友達がいるか、を知りたいにゃんね?」


 ゼノスはピスタの前に腰を下ろして頷く。


「ああ、ヴェリトラという名前だ。ダリッツ孤児院で一緒に過ごした仲間なんだ」

「他に情報はあるかにゃ?」

「同じ師のもとで魔法の修行をしたってくらいかな。孤児院が火事になってから会ってないから、その先はわからない。ただ、地下ギルドの大幹部にどんな怪我でも治す奴がいるっていう噂を聞いたことがあるんだ。あいつは頭も良くて才能も凄かったから、もしかしたら、そいつがヴェリトラの可能性もあるんじゃないかと思ってな」


 逆にもし違うならば、地下ギルドなんていう不穏な集団に敢えて関わる必要はなくなる。


「……」


 しばらく黙った後、ピスタはおもむろに言った。


「まず……さすがのあたしも大幹部の本名まではわからないにゃ。だから、ヴェリトラという名前の大幹部がいるか、という質問には答えられないにゃ」

「そうか……」


 落胆しかけると、「ただ――」とピスタは続けた。


「どんな怪我でも治せる、という大幹部は確かにいるにゃ」

「……!」 

「あたしも会ったことはないけど、確かそいつは【黒の治癒師ナイト・ヒーラー】と呼ばれていたはず。何年か前に地下ギルドに現れ、法外な金を取って治療を施す。地下の人間は表に出られないような奴ばかりだから、多少金がかかろうが治療を希望する者は大勢いたって話だにゃ。結果、瞬く間に出世して大幹部の座についた、と聞いてるにゃ」


 何年か前からの活動、という点では時期的には合致する。

 わずかに鼓動が早くなるのをゼノスは感じた。


「【黒の治癒師】か。とりあえず地下ギルドに行って、そいつに会えばいいんだな」


 しかし、ピスタはぶんぶんと首を横に振る。


「そんなに甘くないにゃ。地下ギルドの大幹部に簡単に会える訳がないにゃ」

「普通に訪ねて行ったら駄目なのか?」

「そもそも居場所からして不明なのが大幹部にゃ」

「じゃあ、どうしたらいいんだ?」


 ぽりぽりと頬を掻くと、ピスタは目の前で指を二本立てた。


「一応、方法としては二つあるにゃ」

「二つ?」

「うん、一つは地下ギルドで実績を上げて大幹部になることにゃ。大幹部と対等に会えるのは大幹部だけ、という不文律が地下にはある。定期的に大幹部だけが集まる会合があるという噂だから、もし大幹部になれれば、その場で他の大幹部に会うことができるはずにゃ」


 ゼノスは頷いて、額に手を当てた。


「地下ギルドの大幹部になる、か……」

「って、何を真面目に考えこんでるにゃっ。そんなことできる訳がないし、これは非現実的な選択肢だにゃ。可能性があるとすればもう一つの方。と言っても、もう一つも相当大変ではあるんだがにゃ……」

「とりあえず、聞こうか」


 先を促すと、ピスタはもう一度周囲を見回してから言った。


「【黒の治癒師】の客になることにゃ」

「……客?」

「【黒の治癒師】の仕事は、怪我や病気の治癒だにゃ。地下ギルドを通して、【黒の治癒師】に治癒を依頼するにゃ」

「なるほどねぇ。客を装えば、治療の際に会うことができるってことかい」


 ゾフィアが横で頷く。 


「うん、地下ギルドは金さえ払えば何でもやるギルドだにゃ。逆に言えば、金次第でどんな奴だって治療するはず」


 ぴんと調子よく立っていたピスタの猫耳が、ぺたりと折れた。


「だけど、問題はその金だにゃ。もともと法外な値段を取っていたことに加え、幹部になってからはあまり自分で動かなくなったと聞いているにゃ。だから、今【黒の治癒師】を引っ張り出そうとしたら、見せ金だけでもとんでもない額が必要になるにゃ」 


 そこで、ピスタはふぅと長い息を吐く。


「さあ、これで地下ギルドの大幹部に会うのがいかに難しいかわかったかにゃ?」 

「ああ、よくわかったよ、ありがとう」

「残念だけど、馬鹿なことは考えず、諦めておうちに帰るにゃ。あたしは知ってることは話したにゃ。それじゃあ――」

「じゃあ、とりあえず二つ目の案で行くよ。治癒をお願いするという名目で、ヴェリトラを呼び出せばいいんだな」

「は?」


 立ち上がりかけたピスタは、ゼノスの顔を二度見する。


「き、聞いてたかにゃ? 【黒の治癒師】に治療を依頼しようとするなら、目が飛び出すくらいの金が必要なんだにゃっ。そんな簡単に――」

「ああ、聞いてたよ。実は一度、この台詞言ってみたかったんだ……」


 ゼノスはごほんと咳払いをすると、ピスタにまっすぐ視線を向けた。


「金なら、あるぞ」

闇医者の貯金額…!


4章終了まで更新頻度あげる予定です(更新は多分夜になりますが、2日に1度または毎日更新になる予定ですのでゆるりとお付き合いください) 


見つけてくれてありがとうございます。

気が向いたらブックマーク、評価★★★★★などお願い致します……!

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― 新着の感想 ―
[一言] 某闇医者のBJは毎回大金せしめているが、 色々使ってもいるから 目が飛び出るような金持ち、というワケではない。 ゼノスはあっちほど稼いでるワケではないが 必要最少限しか使ってないからな。 …
[一言] >「実は一度、この台詞言ってみたかったんだ」 ワリとお茶目ww
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