冬の思い出
雪がしんしんと降り積もる。私はそれを、窓から見ている。
長い間降り続けた雪は、寂れた町を白く染め上げ、きらきらと笑っていて。
それを見ていて心がきゅっと締めつけられて。いつかの日々を思い出す。
それはあの日、彼女とふたりで笑いあった日のこと。あの日も今日のように雪が降っていて、彼女の頬を赤く染め上げていた。冬なのに、春の日差しのように温かかったことを今でも思い出すことができる。
「どうして、行っちゃったんだよ……」
でも、彼女はもういない。ずっと遠くに行ってしまった。今さら手を伸ばしたって届かない。
どこかの左側がじりじり痛んで、服にシワが寄るまで胸を握った。息が、しずらい。
長い間降り続けた雪は、あたり一面をその銀色で覆い隠した。きらきらと、なにも知らない人が見ればきれいな景色の中、私の思い出だけは隠してくれなかった。
読んでいただき、ありがとうございました。