表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

61/71

61頁


 いよいよか。

 ついに最後の謎が明かされる。

 そしてミュウルニクスがゆっくりと語り始めた。



「もうお前も知ってると思うが、とても古い時代、このエマジア島の地下には広大なドワーフ族の王国があった。北の森には高度な文明をもつエルフ族やドリアード族が暮らしていた。その頃の人間族は、今と違って数が少なく、島の末端で小さな王国をつくり暮らしていた。彼らがいたのは島の半分、暁の領域と呼ばれる場所。そしてもう半分には魔獣デーモン族、不死者アンデッド、また私のような獣人族が暮らしていた。これを宵の領域と呼んで、ふたつの領域の間には境界線があった。賢いお前なら、ここまでは簡単に理解できるだろう?」



 分かる。

 いまこのエマジア島には、もう人間しかいないけど。

 いにしえの時代には様々な種族が暮らしていたんだなぁ。

 そしておそらく戦争もあったはずだ。

 境界線では常に衝突もあったろう。

 だって魔獣デーモン族に不死者アンデッドとか、そんなヤバイ奴らがうろついていたら、ちなまぐさい軋みもあったんじゃないか?

 そこでミュウルニクスが相づちをうつ。



「そう。そのとおり。これまで境界線では小さな衝突が何度も起きたわ。そして……あの忌まわしき……魔獣デーモン族の王《グレムコロイトゥス》が宵の領域に棲む全ての種族、魔獣デーモン族、不死者アンデッド、獣人族を従えてついに侵略を開始した」



 魔獣デーモン族の王《グレムコロイトゥス》。

 またの名を《不浄の神》。

 その名とて確かなものではなく、その魔神を称号する名は限りないほどあった。


 死を求める戦鬼。全ての魔を統べるもの。深淵の闇を振りまくもの。

 災いと疫病の申し子。魂を喰らうもの。嗤い歩むもの……。



 いまから500年ほど前。

 多種族が平和の調停を結び、穏健に暮らしてきたエマジア島にて、宵の領域より無数の悪魔たちを率いて侵略してきたのは、そう呼ばれていた魔獣デーモン族の王だった。


 さらにマリアが付け足す。



「その名のもとに、貪欲な野心をもつ、地底深く奈落の領域の魔獣デーモン族の名立たる覇者達が、永劫の屈辱的な潜伏を経て集い始めました。やがて軍勢となり、巨大な戦火となって大陸さえも巻き込む大戦争が勃発したのです……」



「そう。この島ならず大陸にまで戦争の火種が及んだ。おまえも見ただろう? まるで押しつぶされたように荒廃した山々を」



 ミュウルニクスのいうとおりだ。

 エマジア島はあまりにも荒廃していた。

 その原因は《大地を喰らう蛇アースイータースネーク》だけじゃない。

 かつてこの島で、凄惨な争いがあったからだ……。

 クロスカイン領に火山灰が降り積もっているのもそれが原因だ。

 魔獣デーモン族の呪術により、人間達を塵にすべく山が溶岩を噴いたからだ。

 その戦いの爪痕は、今もエマジア島を苦しめている。



「島の各地、至る所に、魔獣デーモン不死者アンデッドの軍勢があらわれた。それもSSランク《妖王(ヘルロード)階級(クラス)やSランク《準妖王(ロード)階級(クラス)に属する化け物たちさ。つまるところ、どこもかしこもSSランク級の化け物に満ちあふれ、蹂躙されていたってわけ」



 不浄の神グレムコロイトゥスが起こした宵の軍勢の戦乱。

 SSランク級の化け物がそこら中で暴れまわっていたらしい。

 これがどういうことかというと、以前に戦った《やもり竜(サラマンダー)》や《大地を喰らう蛇アースイータースネーク》が、どちらもBランク《高位魔族《ハイモンストルム》》と呼ばれる階級(クラス)である。

 このうえがAランク《統率魔族《ルーラーモンストルム》》階級(クラス)

 さらにそのうえがSランク級の《準妖王(ロード)階級(クラス)、最高位SSランク《妖王(ヘルロード)階級(クラス)に分かれる。


 死骨狼アンデッドウルフはCランク《上位種(アンコモン)階級(クラス)

 その下がDランク《下位種(コモン)階級(クラス)だ。


 このふたつのレベルに属する魔物なら、群れてない限り俺でも勝てる。


 でもさらにうえのAランク《統率魔族《ルーラーモンストルム》》階級(クラス)やBランク《高位魔族《ハイモンストルム》》は厄介だ。

 幸運にも単独で出会えたのなら、かろうじて勝ち目をあるだろう。


 だがもっとうえのSSランク《妖王(ヘルロード)階級(クラス)やSランク《準妖王(ロード)階級(クラス)に出会ってしまったら……。


 しかもそれが1体ではなく群れで襲ってきたら、それはもう災害に等しい。

 それにみんなが強いわけじゃない。

 暁の領域の兵士達は、そんな強大な敵を前にして、いったいどのくらい持ち堪えられた?

 たとえ100人の兵士がいたとしても、押し寄せるCランク《上位種(アンコモン)階級(クラス)やDランク《下位種(コモン)階級(クラス)の数千数万の群れに、どれくらい堪えられた?


 きっと酷い戦いだったに違いない。

 ミュウルニクスは深いため息を吐いた。



「たとえエルフやドリアードたちがルーン魔法で対抗したとしても、魔獣デーモン不死者アンデッドたちは、生贄を差し出し、忌まわしき闇の儀式を執り行い、グレムコロイトゥスの暗黒の力を無限に引き出して、襲ってきた……」



 山があった場所はえぐれ、深い谷となり、平原があった場所は呑み込まれ、海の底に沈んだ。

 この戦争によって、エマジア島は地形が変わるほどの深い傷痕をのこした。


 そして……。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ