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 そいつが兜をゆっくりと外した。

 ツンツンと短くて赤い髪に、よく日焼けした小麦色の肌の、イケメン顔の青年だった。

 そいつはどういうわけか、いきなり近づいてきて、ひしっとエリーを抱きしめた。



「エリー! 無事だったか。可憐な君がエドワードに捕まったらどうしようかと心配していたんだ。無事に戻って来て嬉しいよ」



 俺はどん引きした。

 その騎士は、言っている事とは反対に、なんというかチャラチャラした色男風の声だ。

 例えるなら、もう女の子だったら誰でも口説きそうな下心丸見えのお調子者という感じか。


 なんというか、この世界には《普通の人》はいないのか?

 エドワードといい、この義勇軍の下っ端野郎といい、まともな男はこの世界には居ないのか?



「……そうだ。俺は大切なことを忘れていたよ。復讐のために戦っているんじゃない。君のような健気な少女達を、邪悪なエドワードから守るために戦っているんだ……この世界中の女性を、たとえ君みたいな少女さえも、余すことなく口説いてモノにするのが俺の夢なんだ」



 うん。

 しなくていいよ。

 お前のほうが邪悪なニオイがする。



「おや? 新しい友達ができたのかいエリー、あははははっ。仲良くしてやってくれよ子狐くん」



 奴はそう言うと笑って、俺に真っ白な歯を見せつけた。

 ヴェルナスとエリーがいるのに、なぜ俺に話題を振る?


 それにしてもいけすかない奴だ。

 ちょっと噛みついてやろうか?

 というかこんな変態は放っておいて、はやく義勇軍のリーダー《レオンハルト》に会いに行こう!

 彼を諭す。

 義勇軍を引率して伯爵邸を攻めても、何の解決にもならない。

 たとえ成功しても、王都の兵士団によって報復される未来しか待っていない。


 ほんとうに領民を救いたいなら、どうするべきか考えるんだ。

 まず大切なのは農地改革。

 この火山灰まみれの大地では、有機物がろくに分解されず、栄養がとぼしくなっている。

 この黄褐色の土を見ろ。

 黒い土は栄養満点に見えるが、これは違う。

 逆に栄養にとぼしく痩せているのだ。

 だからまずやるべきは土壌改善だ。

 そうすれば作物が育ちやすくなる。

 農民が飢えなくなれば、貧乏のせいで、子供を売るようなこともしなくなる。

 領内の経済が回れば、賊を制圧できるようになる。

 奴隷商人もいなくなり……。

 お前のようなロリコン変態騎士もいなくなる……!


 それを悟らせる為に、俺はレオンハルトに会いに行くんだ。

 このクロスカイン領を真の意味で平和にできるんだ!


 だからヴェルナス、エリー、いそいでくれ!

 はやく俺をレオンハルトのもとに連れて行ってくれ……。


 というか感情で動いている野生児ヴェルナスが、こんなロリコン野郎を放っておくわけないか。

 ではこの変態を叩きのめしてから、先に進むとしよう。


 そうおもって俺はヴェルナスの顔を見た。

 彼は目が輝いていた……。

 それにエリーも……。

 彼らは変態騎士のまえに跪いた。そして抱っこされていた俺は地面に降ろされた。



「レオンハルト様! ご無事で何よりです!」



 それを聞いて、俺は口から大量の血を吐きそうになった。



「くぎゅうううううううううううううっ……!」



 この変態騎士が俺の探し求めていたレオンハルトだったのか?

 幸か不幸か。

 俺はついに義勇軍のリーダー《レオンハルト》に接触した。

 もうロリコン変態騎士なんて呼んだりしない。

 彼がレオンハルト本人なら、俺のことを覚えているはず。

 きっと温かく迎えてくれるだろう。


 そして俺たちは義勇軍のアジトへと向かった。


 俺はレオンハルトから、ヴィオニック禁呪図書館の地下に関する情報を聞き出した。


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