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 まったく奇妙な場所だ。

 ここも祭壇であるらしいが、前のような神々を崇拝する場所じゃない。

 一言でいうなら、そこは死を崇拝する場所だろう。

 無数の髑髏どくろのレリーフが壁に嵌め込まれているし、大鎌を持った骸骨の銅像がならんでいる。


 なんとなくわかる。

 これは死神ヘグファルトを崇拝する祭壇だ。

 なぜヘグファルトにだけ、このような特別な祭壇があるのか?


 おそらくだが、ドワーフ族の戦士は《死神ヘグファルト》を崇拝していたのではないか?

 理由はその《加護(ギフト)》である《死に戻り》スキルだ。

 そのスキルで、無敗の戦士をつくろうとしていたのだ……。

 その代償として、ドワーフ族は滅んだ。


 ドワーフ族の衰退の歴史に思いを馳せ、悲しくも恐ろしい気分だった。

 だとしたら、マリアは大丈夫なのか?

 彼女も《死神ヘグファルト》から加護を受けているのだ……。


 なんらかの呪いを受けているのではないか?

 やはり死神の加護などろくな物じゃない。

 すべて終わらせて屋敷に戻ったら、マリアを説得しないといけない。

 でもどうすれば《加護(ギフト)》を外せるのだろうか?


 この図書館に住んでいるミュウルニクスなら、何か知っているかもしれない。

 今度会ったら確かめよう……。



 それに。

 ダンジョンをうろついていると、なんだか嫌な視線を感じる。

 影に潜んでいる魔物たちの視線だろうか……?

 だとしても、こんな禍々しい視線は初めてだ。

 地獄の底から死神に睨みつけられているような血も凍る視線。


 エドワードが言っていた《あいつ》なのか?

 いったい誰なんだ?


 このどこかで俺達を監視してる奴がいる……。

 そいつはエドワードが領地経営に失敗しているのを見て嘲っている。

 俺が農地改革に成功したら、怒りをつのらせるだろう……。

 ただでさえ、俺は目障りに思われているのだから……。

 これまでの情報から、俺はそいつの正体を探ってみた。


 なんとなく……。

 でもまだ不確定だ。


 だから、いつかそいつの正体を暴いてやる。



 そしてヴェルナスのいう穴だが、これは外部から強い力でえぐったような乱暴な穴だった……。

 まさかヴェルナスがやったのか?

 彼がひとりでこんなデカい穴を掘った?


 いや。

 いくらなんでもそれは無理だろう。

 これは彼の開けた穴じゃない。


 そこには髑髏のレリーフや銅像が砕けて散乱しており、壁には幅2メートルほどの大穴が穿うがってある。

 穴はうねりながら外に通じているようだが、どう見ても人間が掘った物ではない。

 例えるなら、でかいミミズが掘った穴だ。

 こんな穴を掘ったのは……いったいどんな奴だ……?


 これほんとうに入っても大丈夫か?

 そう思っている間にも、ヴェルナスが飄々《ひょうひょう》として抜け穴の中に潜っていく。

 まったくお前は危機管理がなってないなぁ。

 もしも中にバケモンが居たらどうする?



 そろそろエリーの腕から飛び降りるか。

 俺を抱っこしていたら、エリーは穴をくぐれないだろうから。



「くぎゅう!」



 俺はぴょんと地面に飛び降りると、照明魔法で穴の中を照らす。

 ヴェルナスに遅れまいとして、抜け穴に飛び込む。



「へえ、君この穴とか平気なの? 狐ってもっと臆病な動物かと思ってたけど、私より度胸あるんだね!」



 なぜかエリーが感心して、羨望の眼差しで俺を見てる。


 ちなみに俺は狐じゃない。

 聖獣カーバンクルだ。


 彼女は自分より小さくて可愛らしい動物が、果敢にも抜け穴に潜ったから感心してるのだろう。

 まあ普通ならこんな穴は潜らないんだけどなぁ。

 でもこれまでたくさん危険な目に遭ってきた。いまさらこんなのでビビってられない。


 まあエリーとはだいぶ打ち解けた。

 せっかくだからサービスして尻尾をフリフリしてやった。

 こっちまで来たら尻尾をモフモフしていいぞ。

 大丈夫だ。穴の中には何もいない。

 怖がらずに俺の後についてくるんだ。


 エドワードが何かをやらかす前に、なんとしてもレオンハルトに会わないと……。

 確かな手ごたえを感じる。確実に俺の計画は進んでいる!


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