表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/71

31頁


「ケイン王国の若き王です。先代セレス様が亡くなって以後、兄のクラウス王が統治していました。

 ですが野心にあふれ、竜心王(ドラゴンハート)(うた)われるクラウス王は、大陸へ遠征戦争に行ってしまい、それから連絡が途絶えました。

 噂では戦争で死んだと……。

 今は弟のカアル王が島の実権を握ってますが……。

 誰よりも横暴で、それゆえに《血濡れ王(ブラッディカアル)》と呼ばれ、地方の貴族たちに更なる税を課しています」



 つまりお上からの《取り立て》が厳しくなり、それにともなって領民の課税が増えたと?

 それにしてもやり方がまずい。

 このままでは領地が更に荒廃してしまう。民は領主の財産だ。それが逃げ出してしまってはどうしようもない。



「まだ領主様は幸いでした。カアル王に好かれているので……。それは……領民の子供らを労働者として売ったからです……」



 なんだって?

 だとしたら本当に酷い話だ。エドワードは何を考えているんだ?

 暴君王と一緒に領民を苦しませている悪徳伯爵とか……。

 まさに日本でよく見た勧善懲悪モノの悪代官だなぁ……エドワードの奴はぁ……。

 それで領民は反乱を起こさなかったのか?



「カアル王に気に入られるためとはいえ、人狩りをしたのは明らかな失敗だったと私もおもっています……」



 だから街が活気を失っているのか。



「港町に住んでいた者のなかには、《義勇軍》に寝返る者も多くいました」



 マリアがいうには《義勇軍》とは、森の中に隠れている義賊が結成した地下反抗組織レジスタンスのことらしい。

 彼らは各地で貧しい農民達を煽り仲間を増やしては、貿易商の物資を略奪したり、カアル王やエドワードの重要な拠点を襲ったりしてるそうだ……。


 これはよくない。

 この世界の法律とかは知らないが、俺が思うに義勇軍に協力した奴は家族もろとも死罪ではないか?

 エドワードはともかくカアル王ならやりかねんぞ。


 その話を聞いたら、さすがに俺も気分が悪い。

 どうにかならないかなぁ。


 だが少しずつクロスカイン領の真実が浮き彫りになった。

 もしかしたらエドワードの屋敷で働いていた使用人達は、義勇軍の度重なる襲撃に遭い、身の危険を感じて逃げ出したのではないか。

 だからあの広い屋敷にはエドワードとマリアしか居なかったのだ。

 あのヴィオニック禁呪図書館が無人なのも、それでうなずける。


 クロスカイン領は没落寸前というわけだ。

 でもいったい誰が《義勇軍》を指揮している?



「その答えはいずれ分かります……」



 マリアはそれしか言わなかった。

 なぜか言葉を濁している。何か話したくない理由でもあるのか?


 まあペットの俺が心配することではないが、このままで本当に大丈夫か?

 この現状をどうにかしないと……。

 エドワードにも罪はあるが、諸悪の根源は《血塗れ王カアル》だ。

 いくらなんでも無茶苦茶な奴だぞ。


 どんな人物か会ってみたいが、辺境貴族のペットでしかない俺には無理だろうなぁ……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ