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 人間と獣が意志疎通できるアイテム。

 なんて素晴らしい!


 精霊や神々の力に匹敵する偉大な道具だ。

 まるで神器じゃないか。

 そんな魔法道具マジックアイテムを序盤から手に入れるなんて……俺はなんてツイてるんだ!


 ミュウルニクスはハンカチで手を拭いた後に、懐から何かを取り出した。

 俺は鼻水を垂らしながら、期待して見守っていた。


 なにやら1枚の羊皮紙を取り出す。

 それと1本の筆を取り出した。



 筆はともかく羊皮紙ときたか……。

 羊皮紙は動物の皮を加工して、筆写の材料としたものである。

 やはりこの世界は中世ヨーロッパに似ていて、《紙》というものが非常に高価なのか?

 だとしたらこの図書館はどれだけの値打ちがあるのだろう。

 その知識もさることながら、こんなに大量に《紙》があるのだから、その値打ちは天文学的数値だろう。


 おもわず余計なことを考えてしまう。



「すまぬ。紙がこれしかないゆえ我慢してくれ……それでは始めるぞ……!」



 そういうとミュウルニクスは、懐からさらにインクの入った瓶を取り出し、その羊皮紙に文字を書き始めた……。

 俺は固唾を飲んで見守った。すでに鼻水は止まっていた。



「よし出来た!」


「んきゅう?」



 ミュウルニクスはかがんで俺に羊皮紙を見せてくれた。

 緑色の光に照らされたそれには……。

 その羊皮紙には規則正しく文字が並んでいた。

 なんていうか、その、アルファベットを順番に並べたような感じだ。


 もっというなら日本語の《五十音図》というべきか。

 下に数字のようなものが並んでいる。



「これを渡すわ」



 そういってミュウルニクスは《羊皮紙》と《硬貨(コイン)》を俺に渡した。




「よく見ておきなさい。羊皮紙を広げたら、こうやってコインを動かすの」



 はい?

 俺は彼女が何を言っているのか分からなかった。

 ミュウルニクスは羊皮紙を床に広げた。

 その上にコインを乗せ、決まった文字の上にコインを這わせる。



「これが《こんにちわ(エヴァンス)》。とりあえず今はこれだけ覚えておきなさい。他の言葉はまたそのうち教えるわ」


「くぎゅうううううう……!」



 いや、待て待て待て……。

 これってアレだろ?

 地球でいう《コックリさん》だろ?

 五十音図を書いた紙のうえにコインを置いて、文字を這わせるって……。

 まんま《コックリさん》じゃないか?



 確かにこれなら獣の俺でも人間と意志疎通できるとおもうが……。

 ちきしょう!

 俺が想像してたのと違う。

 もっと凄い魔法道具マジックアイテムをくれるとおもってたんだ……。

 俺のワクワク感を返してくれ!



「まあ落ち着ついて。これほど低コストで使える道具は他にないわ。とりあえず今のところはこれでしょ? それにもう戻った方がいい。おまえが居ないとマリアやエドワードが訝しむ。勝手にこんな場所に居たら怒られるわよ?」



 くそ。

 なんか騙されてるような気もする。

 でもしかたない。今日はこれをもって帰るか……。

 明日になったらまた来るぞ。そのときはもっと文字を教えてくれよ!


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