表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/71

17頁


「どんな人でも、というわけではない。魔法というのは個人の魔力に影響するの」



 筋肉がなければ重い物を持ち上げることはできない。

 スタミナがなければ長い距離を走ることはできない。

 泳ぎが下手ならダイビングはできない。

 つまりそういうことだ。

 スポーツジムに通って筋肉を鍛えるのと同じように、魔力も鍛えないと魔法はあつかえない。



「そういう考えもあるわね。でも精霊が使うような《高位魔法》を覚えたいなら、ただ訓練するだけじゃ駄目なの」



 さらに強力な魔法を操りたいのなら、それだけじゃだめ?

 どういう意味だろう?

 ミュウルニクスは椅子に座ると足を組み、もっともらしく咳払いした。



「それは神々に認めてもらうことよ。選ばれたというべきかしら。すると神々の中から1柱を守護神ガーディアンとして選ぶことができるの。選ばれた守護神ガーディアンは独自の《加護(ギフト)》を与えてくれるわ」



 神の加護ギフト

 それはすごい。

 でもどうすれば選ばれるんだ?



「神々に認められるかどうかは、あなたの運次第ね。こればかりは運命に身をゆだねるしかない。でも私は神に選ばれ加護ギフトを授かっている。そういえばたしかマリアも……」



 なんだって?

 あのメイドのマリアも神様から《加護(ギフト)》を与えられている?



「おっと余計なことを言ったわね。今のは忘れてちょうだい」



 忘れられるかっての!

 もっとくわしく教えて欲しいが……でも待てよ。

 ということはカーバンクルの俺でも、神様から《加護(ギフト)》をもらえるとか?

 神様に選ばれた瞬間てのは肌で分かるのかな?



「うーん。自分が選ばれる時というのは、なんとなく直感で分かる。そのときに、自分の信奉したい神の名を上げ、誓いの言葉を述べる」



 ふうん。誓いの言葉か。

 そういえば古いファンタジー系児童書で、ある騎士が竜の前に跪き。

『太古より生きる魔竜よ、我に死をも受け付けぬ力を、魔王を倒す力を与えてくれ!』

 なんてかっこいいセリフを吐いていたのを思い出した。

 そんな感じのことを言うのかな。ちょっと恥ずかしくないか?

 ところでミュウルニクスはどんな誓いの言葉を立てたのだろう?



「私か? うふふふ……私はな、反則技チートして楽しく暮らしたいから《加護(ギフト)》をおくれ、みたいなことを言ったかしら」



 なんというか、とんでもなく破天荒なやつだ。

 狼魔貴族てみんなこうなのか?

 これが漆黒夜ミッドナイトの魔女と呼ばれし高位魔族ってやつか?


 それにしても彼女は魔族のはずなのに……神様から加護を貰えたんだな……。

 本当にミュウルニクスは何者なんだ?

 いろいろと謎が残る。


 さて。

 俺だったらどうしようか……。

 この世界の《守護神(ガーディアン)》ていうのは、俺があの画廊で見た神々のことだろう。

 大力の神とか、狩人の神とか、知恵の神とか、鍛冶師の神とか、豊穣の女神とか。

 それで誰を選ぼうかなぁ?


 そうだ。

 光の糸をあやつり、俺をこの世界に転生させてくれた神様……。


 もし俺が蜘蛛の神を《守護神(ガーディアン)》に選んだら、どんな《加護(ギフト)》をくれる──。



「やめて!」



 まるでナイフのように鋭い声。ミュウルニクスに睨まれた。

 そして、しばらくの沈黙のあとに彼女が静かに言った。



「蜘蛛の神アラクネアは運命をもてあそぶ邪神だ。むやみにその名を語るな! 呪われて運命を狂わされるぞ。私はそういう連中をたくさん見てきた……」



 えっ?

 そうなの?

 だって俺を転生させてくれた神様だし……。

 邪神とは思えないけど……。


 だがそれ以上この話は禁句になってしまった。


 どうやら、俺がこの世界に転生した事には、何か深い理由があるようだ……。

 それはまだ何か分からない。

 でもいつかそれを解き明かしてやる!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ