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漆黒夜の魔女ミュウルニクスが語る。
曰く、この島には魔法と呼ばれる力がある。
それは俺が額の石から放った《照明魔法》であったり……。
魔族である彼女が、壊れた椅子に魔法をかけて操った《服従魔法》であったり……。
とさまざまだ。
個人あるいは生物の種によって、それぞれ固有の秘められた魔法を持っている。
これは天性的なものだ。持って生まれた能力であるため、他者が真似することはできない。
これはよくわかる。
つまり聖獣カーバンクルだけが《照明魔法》を使えるとか、そういう意味だろう……。
だが、それとは別に魔法をあやつる者がいる。
それが魔術師たちだ。
エドワードのように独自に研究して魔法を得た者。
あるいは魔法を教える専門の教育機関で修行して魔法を得た者。
つまり才能があれば魔法学校で勉強すればいい。
「《西の湖の霜竜学院》が、その最たる例ね」
霜竜学院?
魔法を教える学校か?
面白そうだ。いつか行ってみたいなぁ。
「ふふふ。ここまですんなり理解できるとは驚いたわね。さすが賢いカーバンクル。ならもっと教えてあげるわ。彼ら魔術師が操るのは《古いエマジアの言葉》よ」
エマジア?
初めて聞く言葉だ。
「私達がいるこの島のこと。エマジア島は特に魔素があふれているから、魔術師が多いのよ」
魔法と神秘に彩られたエマジア島。
世界のはじまり。
創造神だけがいて虚無しかなかった時代に、この島が初めて創られたという神話がある……。
そして創造神は精霊たちに協力をあおる為、彼らと通じるための《言葉》を開発した。
それこそが奇跡をおこすエマジアの古い神の《言葉》。
精霊や自然、あるいは地の底に眠る悪魔達を操ることができる呪文。
それが現代の魔法の基礎となった。
神話時代の奇跡の業が、いまもこの島には多く根付いている。
きっと地球にも、太古にはそんな神秘の力が存在していたのだろう……。
でも魔法は邪教として糾弾され、長い歴史の彼方に葬り去られた……。
それがこの世界ではいまも息づいている。
「さきほど私が《解呪》、《呪物》と唱えたのを覚えているかしら?」
うん。覚えている。
ミュウルニクスがその《ことば》を発したとき、あの椅子の化け物は崩れ落ちた。
つまりあれが古代エマジア語の呪文?
どんな人物でも呪文を唱えれば、魔法が使えるのかな?