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 やばいな。

 だんだん数が増えている。

 あの骸骨狼どもめ……。

 はじめは4匹しかいなかったのに、いまでは十数匹までふくれあがっていた。


 そいつらに追われながら、俺はやっと理解した。

 南米のアマゾンでは、グンタイアリの行列が馬の進行をも遮るという。グンタイアリは獰猛でどんなに大きな相手にも集団で群れて襲い掛かる。ゆえにグンタイアリの行列は物理的な障壁にちかい、とても厄介なものだ。

 グンタイアリと比喩したが、まさにそう呼ぶにふさわしい。

 この骸骨狼らは、無数に湧いてく凶暴なグンタイアリと同じだ。


 アリの行列と同じで近づいてくるものを容赦なく襲い掛かる。

 屋敷から出ようとするもの、あるいは屋敷に近づこうとするもの、どれも結局は同じだ。

 死骨狼アンデッドウルフの群れに追い立てられ、結局は遁走とんそうするはめになる……。


 なぜマリアは図書館に移るとき、わざわざ長い階段をあがって、屋上の橋を利用したか?

 なぜ彼女は玄関を開けて、外から図書館に行かなかったのか?


 やっとその理由が分かった。

 こんな化け物がうろついていたら、外に出られるわけない!


 ついに取り囲まれ、奴らが四方から飛び掛かってきた。

 こうなったらしかたない。


 いちかばちか、アレをやるしかない……!

 轟く雷鳴のような光をイメージする。

 体の中を雷が走るような強烈な感覚をイメージするんだ!


 やがて手足に電流のようなものがピリッと走る。

 まだ弱い。意識を集中させて……もっと強い光をイメージするんだ。

 まるで骨の内側を電流がほとばしるような高揚感こうようかん

 電流が額の光石に集まっていき、ここでいっきに発動する!



 それは雷のような力強い閃光だった。60秒ほど、周囲の森を照らす。

 あたかも夜が明けたかのように、腐葉土の中の虫が逃げていくのが見えるくらいに、まばゆく照らしだす。

 この魔法に相手を痛めつける力は無い。

 しかし骨狼らは感電したように痙攣けいれんした。そして蜘蛛の子を散らすように逃げていった。


 やったか。


 あれがアンデッドモンスターなら、光は有効な撃退法かもしれない。

 昔よくやっていたRPGでは、アンデッドモンスターは神聖な道具や魔法に大抵弱かった。

 不死者アンデッドは死という《負のエネルギー》をまとっているから、回復魔法や神聖魔法という生命のプラスエネルギーを忌避するのだ。

 そして《光》というものも生命にとってはプラスのエネルギーである。

 だから死んでいるものにとってはマイナスに作用する。

 そういう設定だった。


 おどろいたことに、この世界の不死者アンデッドも光を恐れている。

 死という負のエネルギーと生命のプラスのエネルギー。

 この世界もRPGと同様にそういう概念があるようだ。だから奴らは光を恐れるのか?


 それとも突然の光源に驚いただけか?

 まあどちらにせよ、光が奴らにとって有効な手段であることは間違いない。

 そう。俺はこのとき初めて《照明魔法》の意外な使い方を知った。


 もしかしたら……。

 目の前で照明魔法を使えば、たとえ相手が人間でも、目をくらませることができるかも?

 わずかな間でも、相手を《盲目状態》にして行動不能にできる?

 照明魔法をくりかえし発動すれば、相手を永遠に行動不能にできるのではないか?

 この魔法を極めれば、あのやもり竜にだって勝てるぞ……!


 だからか……。

 だからこの世界の貴族たちは、聖獣カーバンクルをペットとして欲しているんだ……。

 カーバンクルの額の石から発動される《照明魔法》は死者さえも撃退する力がある。


 それだけじゃない。

 いきなり暴徒に襲われても、光で相手の目をくらませ、反撃の機会を得られる。

 役立たずと思われていた《照明魔法》は、実は最強のユニークスキルだったのか?


 そう考えると、聖獣カーバンクルに転生したのは、俺にとって大きなアドバンテージだ。

 もしも人間に生まれてきたら、死骨狼アンデッドウルフの群れにかこまれ、どんな目に遭っていたか分からない……。



 さてと。

 また新たな追っ手が来る前に、安全な図書館の中に入ろう。

 大丈夫だ。図書館は目と鼻の先にある。

 あとは図書館の入り口が開いていることを祈るしかない!


 外から見ると、ヴィオニック禁呪図書館は3階建ての古めかしく立派な建物だった。

 そして正面の2階の窓に明かりが灯っている……。


 入り口に来た。

 俺はあまりの驚きにビクッと跳び上がってしまった。

 やはり図書館の2階に誰かいる……!

 あれは幽霊なんかじゃない。生きている人間だ!


 ゆらゆらと揺れるランプの光を背景に、大きな人影シルエットが窓辺に立っている。

 頭には狼のような耳がぴいんと立っており、腰からはフサフサの尻尾が生えている……。

 やはり見間違いじゃないか。いわゆる獣人というやつか?


 やはりこの屋敷には俺たち以外にも誰かいるんだ!

 でもいったい誰なんだ?



 そいつは俺に手招きした。

 さあ、こっちに来いといわんばかりに……。

 俺は導かれるように図書館の中に入っていく。



 この場所に住んでいるのは、魔術師マスターエドワードとメイドのマリアだけかと。

 今まで姿を見せなかったが、ここには3人目の人物がいる。


 だがしかし慎重に対応しなくて。

 その人物が友好的とは限らないから……。

 もしかしたら盗賊かもしれないし、領主を暗殺にきた曲者かもしれない。

 だったらなおさら確かめないと!


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