【orzの魔法使い】、【欲しいのは銀貨】
「私の魔法の前には、誰もが屈服するよ!」
そう言ってのける、とある魔女がいた。強制暗示を得意とする魔女で、確かに彼女が魔法をかけると途端に、誰もが膝を付き、頭を垂れる。
・・・過去の恥ずかしい話を暴露され、がっくりと項垂れるのだ。記憶を根掘り葉掘りほじくり返され、本人さえ覚えていない事さえ突きつけられる。そうして使い魔とした人間は数知れず、巷ではある戯れ歌が飛び交っていた。
「そこ退けそこ退け悪女が通る。悪い奴らは逃げ出しな、恥かき人はご用心。あいつの前に顔出すな、頭を垂れて奴隷行き。ここはオズだがあいつはorzだ」と。
両親を亡くし、住む場所も何もかもを失った少女がいた。通りすがりの男が親切心で、少女に一切れのパンを与えたのだったが。
寒さに震える老人を相手にも、少女はブレなかった。
「新しい服を買ってくるから、銀貨ちょうだい」
空腹を訴え、持っているパンを欲しがる少年に対しても、同じ対応だ。
「買ってきてあげるから、銀貨ちょうだい」
大人は誰も、彼女に同情する事は無くなっていた。一枚の銅貨を渡し、これで何か食べなさい、と言ってもこう答えるからだ。
「同情するなら銀貨くれ」