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手紙

ここから四章になります。


昨日は一人の方にブクマ頂きました、ありがとうございます。


 レム・シュタイナー様


 この手紙をレム、あなたが読んでいるということは、私に何かあったということですね、この手紙は誰から受け取りましたか? デンからならうれしいのですが、もしアランだったなら、酷なお願いをしてしまい申し訳ないと、一言お詫びを言っておいて下さい。


 そしてこの手紙を読んでいるということは、あなたは無事だったという事、もしかして泣いていますか?どうして? なぜ? と後悔していますか? 泣いてくれるのは嬉しいのですが、後悔はしないで下さい、これは私が立てた誓い、私の望んだこと、それが達成できたのですから、私は自分を誇っていく事ができます。


 レム覚えていますか? 私とあなたが初めて出会った日の事を、私はあの頃毎日天に祈っていました、この日々耐え忍ぶ生活を何とかしてくださいと、何百、何千、何万と祈ったことか、そんな時あなたは私とデンの前に現れました、目付きの悪いあなたは、初めいじめっ子より怖い人かと思ったんですよ。


 でもあなたは違いましたね、あなたは私に色々なモノをくれました、強さ、仲間、姓、家族、夢、本当に沢山のモノを私にくれました、そして今、パウロ様の元で国冒なんて言う大層な仕事まで頂きました、最近私は思うのです、幼き頃の私の祈りは届いていたのだと、そして天は私の元にあなたを使わせてくれたのだと、今は毎晩天に感謝しています、あなたを私の元に使わせてくれてありがとうございますと。


 そしてレムあなたは、必ずこの後の世界に必要となる人、なぜかって? それはあなたが天の使いだから、私にはあなたが天使だったのですから、ですからあなたは生きてください、私の分も生きてください、私にくれたように、沢山の人に沢山のモノを上げてください、あなたにはそれが出来るのですから、そして次会う時に聞かせてください、私のいなくなってからの出来事を、辛かった事、楽しかった事、幸せだった事を沢山聞かせてください、先に行って待ってますから、寂しいからって急いでこないで下さいね。



 レム、私はあなたに逢えて本当に幸せでした、また会う日までしばしの別れです。


 PS:あなたの買った船、無駄にしちゃってすいませんね、でも同じ夢を追っていたことがわかって、嬉しかったですよ。


 ありがとうレム



 バステノ・シュタイナー



 レムはパウロ王の許可を得て、国冒専用ダンジョンの入り口の端に墓を建てた、パウロの元に来て、三人で一番長い時を過ごしたのがここだった、その思い出の場所に墓を建てる、墓にはバステノとデンダルークの名前、シュタイナーの姓が彫ってある、そして今、レムの手によってレム・シュタイナーのドックタグがかけられた。


 レムの首にはドックタグが二つ、バステノとデンダルークの物だ、レムはそれを握りしめ声をかけた。


「これで三人は一緒だ、毎日は無理だけどちょくちょく来るからよ、バステノ、デン、行ってくるな」


 レムは今日、ヒース達の元へ向かう、いずれ来るだろう戦いに備えて今より強くなる為に、そして二人の仇を討つために、レムは旅立つ。


 レムが二人に挨拶をし、ヒース達はウォタレスに向かうらしいと、六幻から聞いていたので、まずはセルタへと向かおうとして歩き始めた時、ダンジョンの扉が開き一人の男が出て来た、レムはその男を見る。


「ふぅー、あちぃ」

 

 男は身長178cm、黒い髪を一本に縛り後ろでまとめている、目は二重だが切れ長で鋭い、瞳の色は黒、白いシャツに黒い麻のパンツというラフな格好、そしてダンジョンに潜っていたと思われるのに手ぶらだ。


 レムはその目を見た時に一人の少年を思い出した、会ったのはもう10年も前、背丈は大きくなって顔つきも大人びたせいか、前とは違う、だがエレクシアでは珍しい黒い瞳、そして生意気そうな目付き、忘れようがない、レムは男に声をかける。


「天志君か?」


「おっ、また俺の知り合いか?」


「やっぱりそうか」


「悪いけど俺記憶なくて、あんたの事わかんねぇんだ」


「記憶が、そうか、でもあったのは一度だけだ、もし記憶があっても覚えてないかもしれないな」


「そうなのか、それよりあんた強いだろ名前は?」


「天志君の足元にも及ばないがな、俺はレム、レム・シュタイナーだよろしく、で、何でここに居るんだ?」


「何でって修行だよ」


「ウォタレスに行ったんじゃなかったのか?」


「良く知ってるなレム、さん」


「レムでいい」


「俺さん付けとか苦手って言うか恥ずかしいんだ、オッサンって年でもないだろうし、助かるよレム、俺も天志って呼んでくれ」


「そうさせてもらうよ天志、俺も言葉使いは苦手な方だからな」


「で、何で俺達の行くところ知ってんだ」


「俺はヒースさん、いや天志達の元に向かおうとしてたからだ」


「へぇーそうなのか、オッサンなら俺の仲間とセルタに居るぞ、何か船が中々でなくて足止めされてんだ、で、俺は暇だから修行しに来てこれから帰るとこ、何ならレムも一緒に行くか?」


「ホントか、それは助かる」

 旅立つ瞬間に目的の人間に会えるなんて、俺は運がいいな、バステノ、デン、お前達が導いてくれたのか? 見ててくれ、お前達に最高の土産話持って行くからよ。


 レムは天志とセルタへと向かう前に、もう一度墓に触れ声をかけた。


「レム大事な人の墓か?」

 この前までなかったよな、最近亡くなったってことか、セルタの戦闘と関係あるのかもな。


「ああ、俺の最高の仲間、そして最高の家族の墓だ、俺はこの先こいつ等に誇れる人生を送るつもりだ」


「そうか、俺も拝ませてもらっていいか?」


「ああ、あいつ等も喜ぶ」


 天志は二人の墓の前で手を合わせる。

 名前しか知らねぇが、バステノさん、デンダルークさん安らかに眠ってくれ。


「俺がこの戦争終わらせるって言っといた」


「天志なら本当にできるかもな、俺はその手伝いをさせてもらうつもりだ」


「そっか、でも二人の分もレムは長生きしねぇとな、任せとけ俺が強くなってレムも、俺の仲間も、大事な人も皆守ってやるから」

 まだ無理だけど、すぐだ、すぐ強くなってやる。


 そして天志はレムを連れ、リンから借りている転移石でセルタの町へと向かうのだった。


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