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ナンパ師

「ふぁ~よく寝たな」


 天志は初めてだらけの一日に疲れていたのか、お昼前まで眠っていた。


 目覚めた天志は、リンに声をかけようとしたが、リンが見当たらない、どこか隅で寝ているのかと見回してみたが姿がない。


 どこ行ったんだあいつ、まっ、どっか行ってもあいつの方が俺よりこの世界は詳しいんだから心配ねぇか、それより飯だ寝すぎて腹減った、一泊二食付きって朝晩だけとかあるよなきっと、最悪外で何か食べるか、それから修行だ。


 今日の行動を考えながら、天志は食堂へと向かう。


「女将さんおはようございます」


「あら、今お目覚め? 疲れてたのね」


「はい、何か寝すぎちゃったみたいで、あの一泊二食付きって、一日二食ってことじゃないですよね?やっぱり」


「いっぱい寝たからお腹空いたんでしょ? 普通は朝晩なんだけど、残り物でよければ食べる? 」


「すいませんお願いします」


「ちょっと待っててね」


「はい」

 何か昨日よりフレンドリーだな、その方が話しやすくて助かるけど。


「はい、おまたせ、いっぱい食べるのよ、天草さんは見たところ冒険者でしょ、食事も仕事みたいなものなんだから」


「冒険者って言っても駆け出しですけどね、それと天志でいいですよ、その方が俺も楽なんで」


「わかったわ、天志ちゃんね、素敵な名前よね、祈りたくなるわ」


「どうも、でも祈ってもいいことないと思いますよ」


「いいのよ、祈りは捧げるものなんだから、それじゃ食べたらそのままにしといていいからね」


「はい、すいません、いただきます」


 女将さんは忙しそうに奥の方に入っていった。


 忙しいのに悪いことをしたなと思いながら、天志は遅い朝食をとる。


 料理の方は、何魚かわからない焼き魚と、サラダとお米とスープ、おいしくいただきました。


「ごちそうさまでしたっ」、と誰もいないが、女将さんが入っていった方に向かって声をかけると、奥の方から「は~い」と女将さんの返事があった。


 リンはいないがちょっと魔物でも狩りますか。


 そう思いながら天志はヤドリギを出る。


「おねぇさんトレンディだね、コダマンといいとこ行かない? コダマンいいお砂場知ってるんだ、どぉ? 」


「ごめんねボク、おねぇさん今日はちょっと忙しいの、また今度ね」


「ウンわかった、また今度ねばいば~い・・・チッしっぱいか、今日もマリーに泊めてもらうか」


 なんだ? あのパンダのニット帽かぶってるお子ちゃまは、ナンパか? トレンディってのがもうダサくねぇか、かかわらないようにしねぇとな、そうじゃなくても寝坊して修行出来てねぇんだ。


「あ! お兄さん」


 ついてねぇなチクショウ


「ん? どうした?迷子か? 」


「お兄さん昨日ギルドでにゃんこと一緒にいた人だよね? 」


「にゃんこ? ああ、リンか、そうだけどどぉした? 」


「ねぇあのお話しするにゃんこ、コダマンにちょうだい」


「いきなりちょうだいって、誰かさんみてぇだな、ごめんな、何とかマン、あの猫はあげられねぇんだよ」


「え~なんでぇ? 昨日彼女にギルドの方でカワイイ話す猫を見たって聞いて、急いでギルドまで行って陰から見てたんだ、でね一目惚れしたの、だからちょうだい」


「彼女、一目惚れ、マセガキだなお前」


「へへっ、コダマン、マセガキなんだっ」


 そんなやり取りをしている天志と、子供の所にリンが帰ってきた。 


「「「あ!」」」


 二人と一匹の声がそろった。


「話すにゃんこだ」


「リンどこ行ってたんだよ」


「ちょっと情報収集だよテンテン、それにコダマンこの町にいたんだね」


「リンこのお子ちゃま知ってるのか? 」


「にゃんこコダマン知ってるの? 」


「テンテンこの子は樹神コダマ、リンの見つけた九人のうちの一人だよ、コダマン私だよ、アクマンだよ」


「え! アクマンなの? アクマンにゃんこに変身したの? 」


 説明するのが難しいと思ったのか、それとも面倒臭いと思ったのか、リンは樹神に話を合わせた。


「そう変身したんだよ、今はアクマンじゃなくてリンって言うんだよ」


「ふ~ん、リンか、アクマンの方がカッコいいのに」


「ごめんね、で、コダマンはラインでこのお兄ちゃん見つけたの? あ、このお兄ちゃんは天志君だよ、テンテンって呼んでね」


「らいん? なにそれ? コダマンはにゃんこ探してただけだよ、テンテンねっわかった」


「リンがあげた本読んでないの? もしかしてなくしちゃった? 」


 リンの問いに樹神は、背負っていたパンダのリュックから一冊の本を取り出した。


「なくしてないよ、ほらっ」


「コダマン持ってるじゃん、読まなかったの? 」


「アクマンじゃなくって、リン、コダマン何歳だと思ってるの? 6さいだよ、こんな難しいの読めるわけないじゃん」


「あ!・・・・・ごめーんコダマン、本当にごめんね、そうだよねっ読めないよねっ、リンも時間なくてあせっててそこまで気が付かなかったよ、ホントごめんね、ケガはない? 大丈夫だった? 」


 リンは自分の選んだ子達にガイドブックのような手作りの本を、一人づつ渡していたらしい。


 このエレクシアに一人で来ても慌てないように、迷わないように、まず何をすればいいのかを丁寧にまとめて渡したらしい、ただそれを樹神は読めなかった。


 樹神を見れば読めないことくらい想像できると思うがリンも相当あせっていたことがわかる。


 ちなみに天志はそのガイドブックを貰っていない、なんでだ。


「うん、コダマン強いからね、それにこの町のおんなが優しくしてくれたから全然大丈夫だよ」


「リン、お前こんなちっこい子一人でここに飛ばしたの? やっぱ鬼だな、よし樹神これからは俺達と一緒だ仲良くやろうぜ」


「ホントごめんねぇ」「うん、悪いのいっぱい倒そうねテンテン」


 リンは本当にへこんでいた、天志はそんなリンを見て少しかわいそうになり、もうこのことでからかうのはやめてやるかと思うのだった。


 そして新しい仲間が一人、こんなに小さい子で大丈夫なのかと不安になるが、リンの選んだ子だ、子供じゃなく仲間としてやっていこうと天志は決めた。


「ねぇコダマン、まだスキルブック持ってないでしょ? 今日はコダマンのギルド登録から始めよっか」


「リン、コダマンスキルブック持ってるよ、ほらっ」


 樹神は又パンダのリュックから何かを取り出す。


「「!!」」


 スゲーなコダマン何者だよ! その手にはスキルブックが握られていた。



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