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侵入者

 時刻は23時58分、夜中に戦ってる奴なんていないとヒースは言っていたが、例外が一人、少しでも早く強くなる為、大事な仲間と最愛の人の想いを乗せた、一太刀をあいつに入れる為、寝る間も惜しんで戦う、生き急いでいる復讐者が、男は今日もレイウルフに囲まれている。


「犬しかいねぇなホントによぉ」

 暗い世界に火柱が上がり、夜空を赤く照らす、それと同時に回りにいた数匹のレイウルフを、あっという間に炎で霧にする、そう男は全ての狼に愛された男、橘零だ。


 零はいつものように、次の獲物を探すためスキャンを唱える。

 自分がいる場所に反応があるが見当たらない、上か?火竜でもいるのかと空を見上げるが、そこには満月と、満点の星空が広がるだけだ。


 その時、突如地面から氷の刃が出現する。


 零はいきなりの事で一瞬驚いたが、今の零は簡単にかわす。


 氷の刃が出現した場所の雪が盛り上がり、敵の正体が姿を現す、地面からアイスゴーレムが出現した。

 アイスゴーレムは、北の大地だけに生息する魔物で、2m位の大きさの氷でできた魔物だ、普段は地中にじっとしているが、ただでさえ寒い北の地の、気温が更に下がると顔を出す、日中よりも気温の下がる夜の方がより多く遭遇する魔物だ。

  

「こんばんわ、初めましてだな」

 零は魔物に挨拶するが、返事が返ってくるわけもなく、戦闘態勢に入る。


時雨シグレ

 零の武器、時雨を呼ぶが何も起きない、さっきから左手に違和感を感じていた零は、手袋を取って自分の手を見る、悪魔との契約で差し出した場所、契約の印が記された左手の小指が動かない。


 どうなってんだこれ、アイスゴーレムの大ぶりのパンチをかわしながら、零は自分の身に起きていることを確認する、まず武器が呼べない、そして左手の小指が動かない、更に目の前にはAランクの魔物アイスゴーレムが一体、それだけだ、問題ねぇな、でも変なの来たり、スゲー数に囲まれたらやべぇから、コイツヤったら帰ったほうがいいかもな。


 零は魔物と少し距離を取り唱える


轟炎玉ゴウエンギョク

 右手の掌に赤く輝くビー玉位の火の玉を作る、そしてアイスゴーレムへ向かって駆け出す。


 アイスゴーレムは地面を殴りつける、すると零の足元から氷の刃が飛び出す、それを難なくかわし距離を詰める、アイスゴーレムは何度も地面を殴りつけ、その度に氷の刃が出現するが、全て零にかわされる、すでにアイスゴーレムの目の前まで来ていた零を、今度は殴りつけようと拳を振り上げるが、その時には零の右手がアイスゴーレムの胸に触れていた。


 ビー玉位の赤く輝く火の玉は、抵抗もなくアイスゴーレムの体内に入り、内側からまるで火の玉に吸い込まれるように、アイスゴーレムが消えていく、霧になったのか、水蒸気なのかわからないが煙をあげ、あっという間にアイスゴーレムは消えていた。


「時雨」

 零は確認の為もう一度武器を呼ぶが、やはり反応がない、今日はやめとくか、天聖祭と何か関係がるのか?、よくわかんねぇが時雨が出るまで休んどくか、でも左手の小指だけにしといて正解だったな、あいつに一発喰らわせるために生き返るには、何か差し出さなきゃいけなかったけど、指一本でも良くて助かったぜ、これが腕や足なら今だってヤバかったかもしれねぇし。


 でもあいつだったら、後先考えないで全部やるとか言いそうだな「ははっ」一人の友を思い出し零は声に出して笑った。


「あいつにも会いてぇな」、零は一人夜空を見上げ、友を懐かしむように呟いた。




 ここはレオファルハーム・スルーム、東の天使の住まい、東の天空城、そんな空に浮かぶ城のさらに上空を、大きな大きな鳥が飛んでいた、鳥が天空城の真上を通り過ぎる時、鳥の背中から七つの影が飛び降りる。


 鳥が通って6秒後、天空城に全身黒づくめの六人の男が降り立った、男達はかなりの高さから落ちてきたはずだが、物音一つ立てずに着地した。


「よし、行くぞ」

 リーダー格の男の声で一斉に動き出す、だが一歩目を踏み出そうとした瞬間、六人全員が足を止めた。 


 そして気づいた、一人足りないと、そして考える、このチームはかなりの強者で構成されている、着地ミスなど考えられない、どういうことだ、辺りを見回すがやはり仲間の一人が足りない。


 仲間の一人が自分達が来た道、空を見上げる。


「だ、誰だあいつは」

 一人の声に全員が空を見上げる。


 そこには月あかりを背に、今いなくなった仲間の一人の首を掴んで浮いている男がいた、ゼノンである。


 全員が空を見上げてすぐに、背後から声が聞こえてきた。


「おい、探し物は見つかったか?」

 ダノンである、いつの間にか黒づくめの男達のそばに、不細工な男がいた。


 男達はすぐに臨戦態勢に入る。


「黒いネズミが降ってきたみたいだな」

 ダノンの不細工な顔が更に不細工に歪み、笑みをつくる、その笑みと同時に、ドカァーン!上空で首を掴まれていた男がゼノンを巻き込み爆発した。


「よくやったぞ四十三、一人道連れだ、お前の死は無駄ではないぞ」


「おいゼノン、捕まえとけって言っただろうが」

 爆発に巻き込まれたゼノンをダノンが怒鳴りつける、ゼノンが殺したわけではないのだが、ゼノンに捕まった男は自分は助からないことを悟り、自害したのだ、その時に自分の痕跡を残さない為に爆死した、出来れば敵も巻き込めるようにと、かなり大きな爆発だった。


「ゼノンだと!」

 黒づくめの男達に緊張が走る。


 煙の中から首を掴んだ体勢のまま、傷一つないゼノンが現れる、その手にはもう何も握られてはいなかった。


 


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