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リセット  作者: 吾妻 あさひ
19/19

epilogue

「××年 ◯月 △日」


「今日は、孤児院の院長に、最近の彼女の様子を聞いてきた。」


「どうやら、孤児院で女の子の友達ができたようだ。

あのネックレスを使って、一緒におままごとをしていたらしい。」


「一昨日は、転んで膝を擦りむいて泣いたそうだ。

あの酷い実験にも顔色ひとつ変えることができなかったアルラが、ようやく泣けるようになった。それを聞いた時、私は救われたような気持ちになった。

おかしいよな、あの子を泣けない体に作ったのも、痛めつけていたのも、私だったのに。」


「院長に話を聞いたついでに、彼女宛に洋服を寄贈した。

アルラは、時折自分に届く荷物の差出人を、院長にしきりに尋ねているらしい。

しかし私は、アルラの目の前には、もう二度と現れるつもりはない。」


「帰る前に、彼女には決して見つからないように、少しだけ彼女の姿を見た。

今も彼女の首元で光る安物のネックレスを見て、ああ、もう少しくらい奮発してやればよかったかな、などと場違いなことを思った。」


「最後にアルラが幸せそうに暮らしている姿が見られて、私は幸せだった。」


 日記を書き終え、私は実験室に向かう。

 かつて彼女が座らせられていた拷問用の椅子に、今度は私が座ってみる。

 こんなものを人間に使えばショック症状で即死だろうなと、ぼんやりとあの実験の意義について考えながら、ゆっくりと背もたれに体を預ける。

 椅子の腕置きに腕をぴたりとつけると、椅子付属の拘束器具が自動で手首を締め付けてくる。ひんやりと硬いその感触を、彼女はどんな気持ちで受け入れていたのだろうか。

 あの日の私が、実験室のガラス越しに、今も責めるような目でこちらを見ていた。

 私はいつも通りの実験開始の合図をそらんじてみる。


「これより、第一回目の実験を始める」


そして、


私は起動ボタンに手を伸ばし、


指先がかかっ


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