epilogue
「××年 ◯月 △日」
「今日は、孤児院の院長に、最近の彼女の様子を聞いてきた。」
「どうやら、孤児院で女の子の友達ができたようだ。
あのネックレスを使って、一緒におままごとをしていたらしい。」
「一昨日は、転んで膝を擦りむいて泣いたそうだ。
あの酷い実験にも顔色ひとつ変えることができなかったアルラが、ようやく泣けるようになった。それを聞いた時、私は救われたような気持ちになった。
おかしいよな、あの子を泣けない体に作ったのも、痛めつけていたのも、私だったのに。」
「院長に話を聞いたついでに、彼女宛に洋服を寄贈した。
アルラは、時折自分に届く荷物の差出人を、院長にしきりに尋ねているらしい。
しかし私は、アルラの目の前には、もう二度と現れるつもりはない。」
「帰る前に、彼女には決して見つからないように、少しだけ彼女の姿を見た。
今も彼女の首元で光る安物のネックレスを見て、ああ、もう少しくらい奮発してやればよかったかな、などと場違いなことを思った。」
「最後にアルラが幸せそうに暮らしている姿が見られて、私は幸せだった。」
日記を書き終え、私は実験室に向かう。
かつて彼女が座らせられていた拷問用の椅子に、今度は私が座ってみる。
こんなものを人間に使えばショック症状で即死だろうなと、ぼんやりとあの実験の意義について考えながら、ゆっくりと背もたれに体を預ける。
椅子の腕置きに腕をぴたりとつけると、椅子付属の拘束器具が自動で手首を締め付けてくる。ひんやりと硬いその感触を、彼女はどんな気持ちで受け入れていたのだろうか。
あの日の私が、実験室のガラス越しに、今も責めるような目でこちらを見ていた。
私はいつも通りの実験開始の合図をそらんじてみる。
「これより、第一回目の実験を始める」
そして、
私は起動ボタンに手を伸ばし、
指先がかかっ