八回目の実験と休日
前回の体調不良が原因で、俺はしばらく実験に関わらせてもらえなくなった。要は、作るだけ作って後はお払い箱、というわけか。
「だから反対だったのですよ、事故でなくなった娘さんにそっくりのアンドロイドを起用する、だなんて」
研究員の一人が声を荒げて言う。俺一人の事情に巻き込んでいることは事実だ。だがひとつだけ、譲れない部分があった。
「あれは事故じゃない、俺が殺した」
かつて娘を実験に起用し、苦しめて苦しめて殺したのは、娘を愛しているとのたまっていたこの俺自身なのだ。
「初めに娘を被験体にしたのは俺だ。あとは、娘が一人も二人も大して変わらん」
「博士、それは」
「……実験のこと、よろしく頼む」
一言だけ言い残して、俺は実験室を去る。アルラの方は、一度も振り返らなかった。
知っていたのだ。自分が研究員の間で「あの人はもう駄目だ」と言われていたことなど、もうとっくに。
そして後日。事情を一つも知らない、覚えていないアルラが、またひょこひょこと俺の元へ現れた。
『博士の娘さんは、どんな人ですか?』
「お前にとてもよく似ているよ」
『そうなんですか…ちょっと嬉しいな』
無邪気な仕草のアルラは、カチューシャを黄色くぴかぴかさせながら、俺の私室に入り込んできた。そうして不毛な「おしゃべり」は続いていくのだろう。
俺は、娘を忘れないように、お前を作った。娘の代わりに、俺の断罪のために、何度も何度も、お前は殺されているんだぞ。
もう何度目か分からない、そう言いかけた言葉を、なんとか飲み込んだ。
俺の罪が誰かに裁かれることはあっても、今さら娘は帰ってこない。そのことは、ちゃんと分かっているつもりだったのに。
俺はただ、俺自身が許されるためだけに、今も罪を塗り重ねている。