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一花繚乱  作者: 渡里あずま


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終幕【一】

 天正二年元旦、岐阜城で信長は年賀の宴を開く。

 馬廻りの者達だけの祝宴になった時、部屋の三方には三つの髑髏が置かれた。

 漆塗りをした上に金粉をかけられ、金色に輝く骸骨。

 それを見て、宴の席に招かれた女性――市は、大きくその目を見開いた。


 その三つの骸骨は、朝倉義景と浅井久政・長政親子のものだった。



 ……話は、数年前に遡る。

 比叡山焼き討ちの後、ついに暗躍していた義昭が自ら信長を討とうと挙兵した。


「一度は、父と呼んだ『信長わし』を討つか」


 知らせを聞いた信長は、そう言って笑った。

 そして信長は、義昭の住む二条御所がある上京かみぎょうを焼き討ちした上で和睦を求めた。

 義昭がそんな信長からの申し出を拒否したのは、意地もあったが何より武田信玄が義昭についていたからである。

 名将として名高い信玄がいることで、一時は信長も苦戦したが――そんな信玄が病気で急死したことで、形勢は逆転した。

 流石に殺すことは出来なかったが、義昭は信長によって追放されて、室町幕府は実質終わりを迎えた。



 その後、信長は再び浅井・朝倉軍を攻撃する。まずは朝倉を、それから浅井を攻めたが、これらの戦や交渉で大活躍したのは横山城の守役となった木下藤吉郎だった。

 更に成り上がる為、または浅井家に嫁いでいる市を貰い受ける為、と世間では噂されたが。


「殿の妹姫とそのお子達は、この猿が! 絶対に救って、殿に引き合わせてみせまするっ」


 織田家の家臣達は、藤吉郎が女である信長に惚れ抜いていると知っている為、噂との齟齬に苦笑したり眉を顰めたりしたのである。



 難攻不落と謳われる小谷城だからこそ、織田軍からの攻撃に三年耐えられた。

(それが良かったか、悪かったかは解らんが)

 国や民のことを考えれば、もう少し早く降伏するべきだったのだろう。

 だが市が生んだ娘二人、茶々と初が可愛いさかりであり――更に、その妹である江が生まれたことで、長政は思ってしまったのだ。


(もう少し……もう少しだけ、お市や娘らと一緒にいたい)


 最初は家同士の繋がりや恩義、そしてそれらを無視する信長への不信感から同盟を破棄して戦いを挑んだ。

 けれど、いつからか――妻や娘達を奪われない為に、長政は信長と戦っていた。そもそもが、信長にとって市や茶々達は妹や姪であり、奪うも何もないのにである。


(むしろ、私の方が市達を手放さぬ極悪人だろう……だが、もう大丈夫だ)


 落城にあたり、市と娘達は逃がしている。今頃は、織田軍と合流しているだろう。

 そう思い、討たれる前に自ら命を絶とうとした長政だったが。


「長政様!」


 思いがけない市の声に、長政はギョッとして振り向いた。

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