フカヒレ入りニクマン
『この国の名前はミホン』
『現在の西暦は2046年』
『ミホンはあんまんと戦い、首都トウキョウやニイガタ、キョウトが水没した』
『そして首都はフクオカに移っている』
『今肉まんがいるところはニクハマ県といい、水没したキョウトを「肉まん」で埋め立てて作られた海上都市で、あんまんとの戦い直後は暫定首都があり、今もいくつかの政府機関がある』
『あんまんは今はロチュウという国を支配下に置き、そこでミホンとの戦いの傷を癒すためにしばしの休息に入っている』
新聞を読み耽るとこのようなことがわかった。やはりここは日本に近いが日本とは似てもにつかない未来の世界で間違いないだろう。
そう思い肉まんは新聞を元の場所に戻し、コンビニを出ようとしたときに大事なことを肉まんは思い出す。
「ウミャッッ!!」
コンビニと言えばニクマンじゃないか、ニクマンを買わずして何が肉まんか。
自分でも何を言っているのかわからなくなってきたがとりあえずニクマンを頼むためにレジ前まで移動する肉まん。
そして、レジ前にある中華まんスチーマーの中にあるニクマンの中身を紹介している紙を読み、肉まんのテンションは一気にあがる。
なんとここのコンビニのニクマンには、具材にフカヒレが入っているのだ。
これはなんとしても食べたい肉まんは注文をしようとする時に気が付く。何度目の気付きになるだろうか、自分は金を持っていない。
『……』
まるでこの世の絶望を一心に受けたような顔をし、肉まんは一瞬にして砕け散り、レジ前の床に肉まんの肉片が散らばる。
「ミウ…ミウ…」
文字通り肉まんが泣き崩れていた時、レジ前にいた店員が肉まんにむけてアツアツのニクマンを差し出す。
肉まんは瞬時にしてふわふわで美味しそうな体に戻り、目の前の店員を目を潤わしながら見る。
「ミ…?」
くれる?と店員に聞いた肉まん。通じたのかは分からないが、店員はいいですよと首を縦にゆっくりとふり、ニクマンを肉まんの目の前まで持ってくる。
肉まんは手を震わしながら、優しく包み込むようにニクマンを受け取り、店員に向かって精一杯の礼をした。
コンビニの外に行き、目を輝かせながら肉まんはニクマンを口に運ぶ。
口に入れた瞬間鼻に通る食欲をそそる匂い。
一口噛めば最初はふわふわもちもししてほんのり甘い皮、そして後からあふれ出てくる肉汁。
中の具は肉と玉ねぎがたっぷり詰まっておりもちもち、時々シャキっと実にいい食感。
そしてたまに口の中にあるトゥルッとしたもの、これこそが目当てのフカヒレ。
まるで皮、具が一体となり口の中で素晴らしい音楽を奏でる。まるでここはオーケストラかと錯覚する肉まん。
たっぷり時間をかけて精一杯ニクマンを味わい、完食した肉まんの表情は賢者そのものだった。