第二十四話 ドミニオン級
新宿区にて、純銀弾頭ミサイルによる天使の撃墜を続けていると。
「バカな! 直撃のはずだぞ!?」
驚くべきことが起こった。銀を無視して接近してくる中型の天使が確認されたのである。飛翔能力を持たない代わりに、銀に対しても無敵。振るう剣はケルビム級に準じる。それはかつてより予見されていた「ドミニオン級」という天使の存在だった。
思兼と武尊単座式は草薙を引き抜く。結界剣「ヒヒイロカネ」発動。そして剣戟が始まる。
「思兼、ドミニオン級と交戦中! 繰り返す! 思兼、武尊と共に、ドミニオン級と交戦中!」
「……了解した」大宮駐屯地から返信が入る。
二対一とはいえ、その剣の一撃は致命傷となる。剣と剣のつばぜり合い、激しい打ち合い。銀の効かないドミニオン級がいる限り、その地区の安全は保障できない。
だが次第に、軽やかに、踊るように、思兼の結界剣はドミニオン級の剣を防ぎ、あしらう。GAU-8アベンジャーを構え、援護に回る武尊単座式を警戒し、天使は一歩引いた。その隙を突いた一撃。思兼の一閃が、ドミニオン級の胴体を真っ二つに切断する。
「ドミニオン級一体を撃破!」中隊は歓喜に沸く。
「おそらく、天使も学習しているのだろう」稲城イナバが言った。
「銀に耐性があるということは、今回の空襲では駆除しきれないということだ。思兼と武尊がドミニオン級の全てを屠るというのなら話は別だが……」
「やるしかないんじゃないの?」水城リナが言う。
「どうせ一筋縄ではいかないことは分かり切ってるしな」焔城ユウが続ける。
「……二次空襲までには、まだ時間が必要だ……そちらの判断に任せる」無線の向こうから指令が飛ぶ。
「了解した。宇都宮軍学校小隊は、新宿区周辺にて天使を狩り続ける!! ミサイルの補給を頼む!!」
ケルビム級の撃墜を繰り返し、迦具土のミサイルが再装填を終えた頃。須久奈が緊急の報告を上げる。
「小隊にドミニオン級四体が接近中! 迎撃できません! うわああああ!」叫び声と共にロストする須久奈の信号。
「一度に四体だと!?」稲城イナバは想定を超えるドミニオン級の襲来に、撤退の指示を出すべきか躊躇する。
「とりあえず弾幕を張れ!」先んじて、焔城ユウが指示を出す。
「ねえイナバ君。一度に何体まで墜とせるか賭けをしない?」水城リナは大胆不敵に笑う。
「「無論四体!!」」それは賭けにならぬ賭け。
思兼の結界剣は、爆炎に包まれたドミニオン級に吸い込まれるように、次々と青白い閃光を放っていった。