表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/27

第二十話 医務室での戦い

 オファニム級の最期の反撃で、宇都宮軍学校小隊には多数の負傷者が出ていた。

 その多くは同行していた日赤救護班によって応急処置が施され救われたが、意識不明の重体となった者もいた。これがよりによって、武尊ぶそんのAI開発を担当していた黒城くろぎシュンである。

 

「どうして……」水城みずきリナは大宮駐屯地の医務室に運び込まれた、黒城くろぎシュンのベッドの傍らに座っている。

 言葉の続きは出てこない。どうして付いて来たの? などとは口が裂けても言えない。無論、AI開発者として、現地で武尊ぶそんのAIの挙動を観察したかったのだろう。障害者だから小隊には同行すべきでない、などという理論は、あまりにも酷い差別的思考である。

 

 しかしそれにしても、黒城くろぎシュンの果たしていた役割は大きすぎた。彼は稲城いなぎ家の技術班のゲストメンバーとして、武尊ぶそん支援機の開発計画や、武尊ぶそん新型機の開発計画にも深く関わっていたのである。

 

「……ね……」黒城くろぎシュンはうわごとを呟く。

「……おもいかね……」

「……かんせいさせないと……」

 

 シュンの頭に乗ったタオルを交換する水城みずき。そこで、黒城くろぎシュンは唐突に目覚めた。がばりと起き上がって、周囲を見渡す。

 

「僕は……衝撃で意識を失ったのか……」

「シュン君!」

「リナ! なぜこんなところに居る! お前は武尊のパイロットだろう!」

「だって……」

「俺のことは気にせず行け! 行ってイナバと共に戦え!」

「そんな……」

誇り(プライド)を持て! 信念を貫け! 行ってお前にしかできぬことを成せ! 決して後ろを振り返るな!」

「ッ!」両手を握り締め、走り去る水城リナ。


「……それでいい」


 両手がまだ動くことを確認し、黒城くろぎシュンは安心する。 ベッドテーブルに置いてあった、柄の部分が壊れたメガネ型ディスプレイを起動。現在の日時と、各種開発計画の進捗を確認。

 しばらくして、黒城くろぎシュンは空腹感を覚え、思い立ったようにナースコールを押す。


「僕は……僕にできることをするだけだ。プロジェクト思兼おもいかね……こいつだけはきっと、完成させる!!」


----


 武尊ぶそん複座式は、転倒の衝撃でフレームが曲がっていた。なんとか歩くことはできるが、走ったり跳ねたりはもうできそうにない。

「何がアウトレンジ攻撃だ」武尊ぶそんの臨時格納庫で、焔城ほむらぎユウは愚痴る。

「おもいっきり反撃されてるじゃねえか」


 それに対して、稲城いなぎイナバは言う。

「すまん。小隊が負傷したのは小隊長である僕の責任だ。武尊ぶそん複座式の破損は残念だが、やむを得まい」

 額と顎に絆創膏を貼ったイナバに言われると、無傷のユウは何も言えなくなる。

 

「ともかく水城みずきリナに怪我が無くてよかった。問題は黒城くろぎシュンだが……」

 

 そこに、リナが駆けつける。

 

「シュン君に意識が戻ったの」ぜえはあと肩で息をしながら、リナが言う。

「そうか……それは良かった」

「でもシュン君は何かやることがあるみたい。おもいかねを完成させなきゃって言ってたわ」


「……それは武尊ぶそん新型機のコードネームだ」

「新型機?」焔城ほむらぎユウが問う。


「きたるべき東京奪還作戦に投入される予定の機体だ。統合指令機能が搭載されていて、スペック上は支援機を二十体まで従えることができる」

武尊ぶそん複座式が壊れた今、代わりの機体として、開発が急がれることは間違いない。黒城くろぎシュンもまた、最前線で戦っているのだ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ