表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/27

第十七話 八岐起動実験 後

 稲城いなぎイナバの思考の果てに、かすかに、「にゃー」と鳴く猫の声が聞こえた。


「秘匿コードを確認しました」武尊ぶそん複座式から合成音声が流れる。


「復唱してください。『我らが振るうは世界最期の剣』」


「これは何だ? 開発者のいたずらか?」「とりあえず言うとおりにしてみましょう」


 二人は言われた通りに復唱した。


「「我らが振るうは世界最期の剣!!」」


「続けて復唱してください。『人類のおおざっぱな総意として、これより我らは天使を打ち砕く』」


「「人類のおおざっぱな総意として、これより我らは天使を打ち砕く!!」」


「秘匿コードが認証されました。ロック解除。結界剣『ヒヒイロカネ』を発動します」


 天使にしかありえぬはずの結界が、武尊ぶそん複座式の持つ銀の大剣を包み込む。ケルビム級だけが持っている、あの、ありとあらゆるものを切り裂く剣が、その手の内に再現される。それは武尊ぶそんに搭載されながら、忘れ去られていた力、再びよみがえった力であった。


『そうだ。力は最初からそこにあった。汝はただ自身の持つ力に気付かずにいただけだった。その力を人類の為に使え。そして願わくば、猫のためにも』


 武尊ぶそん複座式の足元で、にゃーにゃーと、灰色猫のミールが歌う。

 

「聞いていない。武尊ぶそんが結界を扱えるなど、まったく聞いていないぞ!」


 稲城いなぎイナバは怒りに満ちた声で不満を述べる。


「だが結界剣『ヒヒイロカネ』。これならば、八岐やまたを撃破できるかもしれん!」


 武尊ぶそんは間合いを詰めようとする。

 八岐やまたは両腕を突き出し、手のひらから閃光を打ち出す。一発は避けたが、二発目に被弾する武尊ぶそん。胸部装甲に凹みができる。

 だがそれでも、武尊ぶそん複座式は前進する。青白く輝く結界剣『ヒヒイロカネ』が、三発目、四発目の閃光を弾く。突進する武尊ぶそん

 

「さらばだ、八岐やまた!!」


 袈裟斬りに振り下ろした大剣が、白い八岐やまたの身体をあっさりと切断する。地面に落ちる八岐やまたの上半身。輝いていたその身は白く濁り、結界は消え、瞳にはもはや何も映らない。

 それが、人類の都合で造られた人工天使の、成れの果ての姿であった。


----


 稲城いなぎイナバと水城みずきリナが武尊ぶそん複座式を降りると、そこには案の定、毛づくろいをする一匹の灰色猫が居た。

 

「またお前に助けられたか」稲城いなぎイナバは呟く。

「どういうこと?」水城みずきリナが問うと、イナバは言った。


「ミールには、武尊ぶそんの言葉が分かるらしい」

「にゃー」前足を上げて鳴いたミールは、威風堂々と、その言葉を肯定する。


「なんでミールがこんなところに?」武尊ぶそん単座式から降りてきた焔城ほむらぎユウが、少し離れて不思議そうに首をかしげていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ