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不思議なカフェ  作者: 紙絵


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25/50

24 狸の男の子

 ソラはウグイスを追っていた。

 等間隔で飛び、木にとまってを繰り返している。


 やっぱり着いてきてほしいんだ!


 あんまり来たことがない所で、ソラは帰れるか不安になった。


 でも、私を連れて行きたいみたいだし……そうだ! 


 ソラはカイに電話する。

「もしもし?」

 カイはすぐに電話に出た。

「カイさん、ウグイスが……」


 ソラは説明しながらウグイスを追って、着いたのは町外れの何もない場所。


「ここに何が?」

 見回すと、木と木の間に何かがいるようだ。

「子狸?」


 そっと近づくソラ。狸は挟まって動けないようだ。ソラに気付くと手招きする。


「蝶追いかけてたら挟まっちゃって! お願い、ここから出して!」


「わっ! 話した!」

 ソラが驚いて一歩下がる。

「行かないで!」

 狸は半泣きだ。ソラは狸を木と木の間から引っ張り上げた。見た目より意外と重い。


「ふぅ」

「ありがとう! ありがとう! もうどうしたらいいかと思ってたんだ!」


 狸は泣きながらソラに感謝する。

「いいよ、お礼なら私をここに連れてきたウグイスに言って?」

「ウグイスさんありがとう〜」


 ウグイスはこっちを見ると飛び立った。

 狸は何か呟くと人間に変わる。

「わあ! 人になった!」

 ソラが慌てる。

、ら

「あれ? あなた、この前カフェにいた男の子」

 武尊が、お守りを作り直した時にいた狸だ。

「あのお店の方でしたか、本当にありがとうございます!」


「いえ、でも狸のまましゃべったり、こんな場所で人になったりするのは、あんまり良くないんじゃないかな?」


 ソラは注意する。私じゃなかったら今頃どうなっていたか分からない。


「そうですね、肝に銘じます」


 そこに見覚えのある車が向かってきた。

「ソラちゃん!」

 窓からカイが顔を出す。

「カイさん、すみません呼び出して……」


「あのお店の人!」

 狸も気付いたようだ。

「車乗って、狸の君も。人も来そうだから、車の中で話聞くよ」

 ソラは事情を話す。

「ウグイスの思考がわかるなんて、ソラちゃんやるね! それにしても……狸君、色々安易すぎるね。家族はどうしてるの?」

 カイが狸に目を向ける。

「家族は人としてちゃんとやってます。僕は、まだうまく変身できなくて……尻尾も出ちゃう事もあるし、虫がいると追いかけちゃったり……」

「そうか。武尊に相談してみよう。家はこの辺?」

 狸はお礼を言って車から降りた。


「大丈夫ですかね? あの狸君」

 普通に見つかって捕まりそうだ。


「心配だよね、武尊に連絡したから何とかしてくれるよ。アイツ面倒見いいんだ」


 カイは武尊を信用しているようだ。

「ソラちゃん今暇なら誘ってもいい?」

 カイがさらっとドキッとする事を言う。


「え! はい、暇です……」

「美味しそうなスイーツがあるお店が、最近できたらしくって……一人じゃ行きづらくてさ」

「カイさん甘いの好きですよね?」


 ソラはそんなカイのギャップがかわいくて、笑ってしまう。


「笑わないでよー」

「いや、かわいいなって思って……」

 は! 口に出してしまった。


「ソラちゃんのがかわいいよ」

 カイは前を向いたまま甘い言葉をはいた。

 二人とも恥ずかしくなって沈黙した。



お店は賑わっている。

川沿いにあるカフェで、確かに男の人一人だと浮きそうだ。

店内に案内される。


「何がおすすめなんですか?」

ソラはカイに訊ねる。

「このかき氷が夏季限定らしいよ。いちごがすごい乗ってる……」


カイは嬉しそうにメニューを見ている。

「それじゃあ私、それにします」


同じものをそれぞれ二人で食べる。

「冷たい! 美味しい」

「結構大きいけど、全然食べられちゃいますね!」

ご機嫌で食べ進める二人。


「橘くん?」

女性が声をかけてきた。


「やっぱりそうだ! かき氷とか食べるんだ、意外だねー」

大学生だろうか? ミニスカートで髪の毛が巻かれている。連れの女性も似た格好だ。


「うん。まあ……」

カイは一瞥して、食べる手を止める。

「妹さん? まさか彼女じゃないよね?」

女性がソラをチラッと見る。


これは……私の事、値踏みしてるな。


「……彼女だよ」

カイが感情のない声で答える。

「え?」

驚く女性。


え?


女性以上にソラが驚く。スプーンをお盆に落とした。


カイさんは女性の方を向くと、営業スマイルを作った。

「だから、邪魔しないでくれる?」


その笑顔に撃沈された女性。目が釘付けになっている。

「う……ごめん、邪魔して!」

顔を赤くして、そそくさとお店から出ていく二人組。

「めちゃくちゃカッコいいじゃん!」「あの笑顔は反則!」「彼女いたんだ」

遠くで話す声が聞こえる。


しばしの沈黙。

「ソラちゃん、ごめん」

カイが俯いて謝る。

「同じ大学の子だと思うんだけど、絡まれる事多くて……今の人も名前分からないんだ。彼女いるって言えば、静かにしてくれるかなって。ソラちゃん利用した。ごめん」

かき氷から水が滴りはじめる。


「カイさん! かき氷溶けちゃいますよ!」

ソラは気が気でない。


「え?」

カイはソラの発言に驚いている。

「別に利用してもらっていいですよ? それより早く食べましょ!」


ソラも食べはじめる。

そんなソラを見つめるカイ。


「ありがと。食べるね」

カイも食べ始めた。

甘酸っぱい味に癒される二人であった。



「ただいま」

 カイは帰宅する。

「お帰り〜」

「武尊、いたのか」

 武尊はカイの家に仕えている為、ちょくちょく出入りしている。


「あれ? なんか良いことあった?」

 武尊が気付く。

「あーうん、まあ……あ! 武尊に任せたい事があるんだ」

 カイは話を逸らした。



 翌日、夕飯の準備を手伝っている狸がいた。

 狸の男の子は武尊の家、もとい、カイの家の橘家で居候する事になった。

「こちらでしばらく厄介になります。うまく変身出来るようになるまで、宜しくお願いします」

 狸の男の子は、カイに丁寧に挨拶したのだった。

読んでいただき、ありがとうございます。

感想、反応いただけると大変嬉しいです。

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