兄の嵐
翌日、リクはソラのバイト先に行こうと、学校帰りに待ち伏せした。
目を離さずにいたつもりが、見失ってしまった。
「ソラ?あれ?」
ソラはリクに気づいていたが、このお店は招かれないと入れない。やはりリクに、ここは見つけられなかったようだ。
「ソラちゃんお疲れ」
甲斐が挨拶する。
「お疲れ様です。」
とりあえず一安心するソラ。
「今日、買い出しに行きたいんだけどいいかな?猫の餌が終わりそうでさ。兄貴も忙しいのか最近来てなくて…」
「兄貴?」
兄という言葉に敏感なソラである。
「ああ、俺の兄貴がちょこちょこ買い出ししてくれてるんだよ。」
「甲斐さん」
「ん?」
いや、仕事だし、兄のせいでも私が行かないなんて勝手すぎる。
「何でもないです。」
兄に見つかりませんように。
ソラはこっそり祈った。
「荷物多くなりそうだから車で、じゃあ行こうか。」
外に出る。兄は見当たらない。ほっとするソラ。
2人で車に乗って出発する。
「ソラちゃん、この前の話の続きなんだけど」
「この前の?」
ソラはピンときていない。
「ソラちゃん歩いてるの見て、その時すごい親しげに男の人と話してたから…」
「あ!はい。」
ソラは俯く。
「あれ誰かなーって思っただけなんだけど。ごめん、困らせてるよね。」
「いや、別に困ってないです。甲斐さんに見られてたと思ったら恥ずかしくて」
やっぱり、あれはそういう。
甲斐は悲しくなった。
「そりゃ、彼氏と歩いてるの見られたら恥ずかしいよね…」
「え?」
ソラが訂正する前に、目当てのホームセンターに着いた。
「じゃあ行こうか。」
甲斐は車を停めるとすぐに出た。
甲斐はソラを見ない。
「甲斐さん?」
ソラが甲斐の態度に戸惑っている。
「猫の餌はあっちだね」
カートを持つとさくさく餌をカゴへ入れていく。そしてレジへ向かう。
「あの、甲斐さん!」
「ソラ!」
ソラの声と重なって、ソラを呼ぶ声がした。
「こんな所に!そいつが昨日言ってたやつか」
リクがソラを見つけて近づいて来た。
「お兄ちゃん…」
ソラが呟く。
「お兄ちゃん?」
甲斐は近づいてくる男が、あの時一緒にいた男と同じだと気づいた。
兄だったのか!
「お、お兄ちゃん落ち着いて」
「はじめまして。ソラの兄です。いつもお世話になってます。」
リクは甲斐を睨みながら挨拶した。
「こちらこそ、お世話になっております。店長の橘と申します。」
甲斐は綺麗な笑顔で挨拶した。
「ふぅん。まぁ常識はありそうなやつだ。ソラ、帰りは俺が迎えに行くから…」
「大丈夫、1人で帰れるから!お兄ちゃんなんでここにいるの?」
ソラが困っている。
「それは母さんに買い物頼まれて…」
兄妹のやり取りを、甲斐は微笑ましい気持ちで見ていた。さっきまでどん底だったのに、安心した。
「それじゃあ、今日はこの辺で。」
リクは甲斐をまた睨みながら去って行った。
すごく帰りたくなさそうだったが、ソラに嫌われるのは嫌なのだ。




