失くし物 その2
「わかった?」
「お守りの場所がわかったんですか?」
ソラと女性は共に驚いた。
「あなたは、自分が今の姿になる前を覚えていますか?」
甲斐さんが女性に訊ねる。
「…気付いていたんですね。」
今の姿?
ソラは話が見えない。
「覚えています。私がこの姿になったのは10年前位です。」
「おばあさんはご健在ですか?」
「いえ、少し前に亡くなって…それがお守りと関係が?」
「そうですね。関係あると思います。」
甲斐さんはポーチに入っていた枯葉を手に持った。
「お守りの正体はこちらです。」
「え!」
女性が枯葉を凝視する。
いやいや、それはいくらなんでも失礼ではないか?
ソラは甲斐さんを見つめる。
「おばあさんは、お守りをご自分の術で作ったのではないでしょうか?」
「…そういう事ですか。」
あれ?納得している?
ソラだけ置いてけぼりである。
「きっとおばあさんが亡くなられて、力を失ってしまったのでしょう。元の葉っぱに戻ったんですね。」
「ずっとここにあったなんて、ありがとうございます。
私は自分をこの姿にするので精一杯で、他の術を使う事は出来ません。両親も私と同じで…
もう元には戻せないんですね…
でも、分かって良かったです。」
女性は立ち上がる。
「私の知り合いで力を持ってる者がいます。連絡先お伝えします。」
「本当ですか?」
女性はお礼を言って去って行った。
「このご恩は忘れません。いつか何かでお返しします。」
ソラは女性を見送る。
鶴の恩返しみたいなセリフだな…
ソラは甲斐をじっと見る。
「ソラちゃん、そんな見ないで、説明するから!」
視線に気付いていたらしい。
先程のまま、隣に座って話し出す。
「彼女は人間じゃないんだ。」
甲斐さんは真剣だ。
「は?」
「彼女は人間に化けている狸なんだ」
「は?」
甲斐さんはまだ真剣だ。
「人間のフリをしている狸って昔からいるんだよ。彼女はきっと、おばあさんからの紹介でこのお店を知っていたんだろうね。」
ソラはあの女性を思い出すが、狸らしさはひとつもなかった。ただ、甲斐が名前を聞かなかった事は不思議に思っていた。
「狸は術を使うから、葉っぱを術でお守りにしてたんだ。その力を使ったおばあさん狸が亡くなられて、効力を失ったと。」
ソラは頭が付いていけない。狸が人間に?
「ついて来れないよね。まぁ、近々実際に見れるから、大丈夫だよ。」
甲斐さんはそう言うと、ソラを見つめる。
「…大丈夫?」
「甲斐さん、あの女性に名前を聞かなかったですよね?」
「うん。狸は名前をコロコロ変えるから、あんまり意味ないんだ。」
へぇー。
甲斐をじっと見て何かを考えているソラ。
「あの、話変わるんですけど、この前の猫カフェの…」
「うん?」
「あれって、デートですか?」
ごほっ!
甲斐さんがお茶を吹き出した。
「大丈夫ですか?ハンカチどうぞ。」
ソラはハンカチを渡す。
「ありがとう…」
「友達に話したら、それはデートだって言われて、もう考えても分からないし、甲斐さんに聞けば良いって思って」
「うーん…」
甲斐はハンカチで拭きながら、唸っている。
「…ソラちゃんはこの前出かけたの楽しかった?」
「楽しかったです!」
ソラは即答した。
「そっか。それならデートって事にしとこうかなぁ」
甲斐さんが楽しそうに笑った。
ソラはなんだか胸がポカポカした。




