失くし物 その1
お店に着くと甲斐が何か食べていた。
「ソラちゃんお疲れ、一緒に食べる?」
ドーナツだ!
「いいんですか?わぁまだあったかい!」
最近ソラは甲斐に遠慮がなくなってきた。距離が近くなったのだが、本人にその自覚はない。
「甲斐さんが作ったんですか?」
「違うよ、食堂でもらってさ。」
食堂のおばちゃんに、甲斐は大人気である。行くと毎回おまけをくれる。
「食堂?」
ソラが首を傾げる。
「うん、俺の大学の食堂。」
「甲斐さんて大学生だったんですか?」
ソラは驚いた。同じ学生だったとは、
「甲斐さんて歳いくつですか?」
「18」
「ええ!」
驚いた。
「そんな驚く?なに、もっと上だと思ったんでしょ?」
話しながらもドーナツを食べる手は止まらない。甲斐は甘党である。
「思ってました。落ち着いて見えたし…でも、最近はそうでもないかも…」
色々失礼なことを言っているが、気付いていないソラである。
「いただきまーす」
幸せそうにモグモグするソラを見て、持ってきて良かったと思う甲斐だった。
お店に来たのは人だった。
「いらっしゃいませ?」
ソラはまたなんて言えばいいか迷った。
「あの…ここは?」
20代前半の女性だ。茶髪でふわふわのスカートを履いている。不安そうな顔をしている。
「こんにちは、こちらの席にどうぞ。」
甲斐さんが椅子をすすめる。
このお店、人も来るんだ…
甲斐さんは手際よくお茶を出すと、
「ソラちゃんこっち座って」
コソッとソラに話すと、自分は女性の斜め前に座った。
「何か困った事が起きましたね?」
甲斐さんの言葉に、女性が一瞬固まる。
「なんでそれを…?」
「ここはそういう方が来る場所なので。」
甲斐さんが営業スマイルで女性を安心させている。
「はあ。」
まだ半信半疑のようだが、警戒は薄れたようだ。
「じつは、大事なものを無くしてしまって…でも、なぜ無くなったのか分からなくて」
女性は話し始めた。
無くしたのは、祖母に貰ったお守りです。
私は小さい頃から怖がりで、例えば、大きな音だったり、車のスピード、人混み、そういうものを怖がってました。
見かねた祖母がお守りを用意してくれて、肌身離さずいつも持っていました。これがあると安心できるので、怖いのも我慢できたんです。
なのに、今日このバッグに入ってなくて…出した覚えもないし、お守りが入ってたはずのポーチはあるんです。でもお守りだけ消えてしまって…
「そのポーチ、見せていただけませんか?」
甲斐さんが女性にお願いする。
「これです。」
中身を出してもらう。
ハンカチ、ティッシュ、リップ、目薬、絆創膏…枯葉?
「ありがとうございます。わかりましたよ。」
甲斐さんはキレイな笑顔を見せた。




