[ベルばらkids]
紗英は大判コミックの棚で足を止め、そっと一冊を抜き取った。
『ベルばらkids』5巻。
ここ最近で「稼げる一冊」となったコミックだ。
『ベルばらkids』は、池田理代子の名作『ベルサイユのばら』をモチーフにしたスピンオフ作品。
原作の登場人物たちをデフォルメ化し、ギャグ調で描いている。原作を知る読者にとっては懐かしく、知らない読者にとっても気軽に手に取れる内容となっている。
紗英は以前、この大判コミック版『ベルばらkids』をセット売りしていた。
当時の価格は4000円前後。
月に一度くらいのペースで、ぽつぽつと買い手がついていた。
この時点での『ベルばらkids』は、売れ行きは悪くなかったが、「稼げる一冊」とは呼べなかった。
それが変わったのは、『ベルサイユのばら』の再アニメ化が報じられた頃から。
そのニュースをきっかけに、『ベルばらkids』のセット価格が高騰。
高騰後も何度か売ることができたが、次第にセットで揃えるのが難しくなっていった。
セットは揃わないと売れない。
揃えている最中の本は、売れる見込みのない在庫。
その時の『ベルばらkids』は5巻と6巻が抜け巻で、出品できずに1か月以上が経っていた。
たまたま4巻がダブったときに、試しに単巻の価格をチェックした。そこそこ利益がとれそうだった。
出品してみたら、すぐ売れた。
ほかの巻も悪くなかったので、『ベルばらkids』は単巻売りで回す方針に切り替えた。
5巻をカゴへ入れると、紗英はゆっくりと歩みを再開し、棚のチェックを続けた。