薬屋のひとりごと
世の中は繋がっている。
その考えこそが、稼げる商品を見つけだす鍵になる。
紗英はそう信じている。
稼ぐとはなにか。
それは、“まだ誰も気づいていない繋がり”を見つけること。
たとえば、こういうことだ。
何かが話題になると、必ず何かが動く。
マンガが売れれば、その原作小説が売れる。
アニメが始まれば、旧作が再注目される。
映画が公開されれば、関連作品の価格が上がる。
大事なのは、みんなが注目する「主役」じゃない。
その主役に引っ張られる「脇役」を見つけること。
注目されていないからこそ、そこには“安く買える余地”がある。
世界は、ひとつの出来事が別の場所に波紋を広げる構造になっている。
その波紋の先に気づけるかどうか。それがポイント。
──いや、正確には少し違うか。
波紋の先に気づけたとしても、自分より先に気づいた同業者がどれほどいるか、そこで話も変わってくる。
商売とは需要と供給の兼ね合い。
ブルーオーシャンを探し続け、見つけたら可能な限り利益を引き出す。それこそ商売のポイントだろう。
しばらく前、紗英が注目した「脇役」がいた。
『薬屋のひとりごと』の原作者、日向夏。
別レーベルでいくつかの作品を発表していて、狙いどころでは?と踏んだのだ。
Amazonで著者検索し、他の小説シリーズをチェック。
やはりというべきか、どれもそれなりの価格がついている。
想像以上に知名度は広まっていたようだった。
そんな中、ブックオフで1冊だけ、220円にまで価格が落ちていた本を見つけた。
『神さま学校の落ちこぼれ』。これも日向夏の作品だ。
日向夏をしばらく追ってみたが、結局仕入れできたのはその1冊だけだった。
まあ、よくあることだ。