アメコミ
出張2日目、早朝の6時前。
カーテンの隙間からこぼれる光で、紗英は目を覚ました。
Tシャツとジョギング用のパンツに着替え、まだ薄暗い市街地を走り出す。
宇都宮城跡の外周をぐるりと一周してホテルまで戻ってきたときには、Tシャツが汗でしめっていた。
大浴場で汗を流し、部屋に戻って朝食バイキングへ。
トレーに餃子と卵焼き、ほうれん草のおひたしを乗せ、ごはんと味噌汁。
軽くおかわりして部屋に戻る。ベッドに腰を下ろし、15分ほど横になる。
9時半ごろ、身支度を整え、チェックアウトの準備。
ケトルで湯をわかし、水筒に緑茶とコーヒーをそれぞれ入れる。
緑茶はティーバッグ、コーヒーは小瓶に入れたインスタント。
荷物をまとめて車へ。
助手席には宿泊用バッグ、後部座席のダンボール箱には、すでに昨日の仕入分が詰まっている。
午前中はブックオフを2店舗回ったあと、宇都宮のまんだらけへ。
品数の多さに圧倒されつつ、手に取ってはスマホで確認を繰り返す。
気づけば1時間以上が経っていた。
集中力が切れたところで、区切りをつけて店を出る。
昼食は「来らっせ本店」。宇都宮餃子の有名店だ。
盛り合わせ定食を注文し、カリッと焼かれた餃子を口に運ぶ。
カリッとした歯ごたえに、あつあつの肉汁。ひと息つけた気がした。
その後さらに2店舗。
2軒目、郊外型のブックオフで足が止まった。
雑誌棚の一角に、薄いアメコミがぎっしり。
雑誌サイズのフルカラー、英語タイトル、スーパーヒーロー系。
英語版――本場のアメコミだった。
値札は350円や500円が多く、状態も悪くない。
ざっと見ても50冊以上ある。
金脈を見つけたのかもしれない。紗英の胸が高鳴った。
数分後。 紗英は苦虫を嚙み潰したような顔をした。
なるほど。雑な値付けで棚に並べられていた理由はこれか──相場が読めない。
Amazonは海外版リンクで、日本での売れ行きが見えない。
メルカリにも同じ表紙はほとんどなく、需要はありそうだが確信はない。
さて、どうするべきか。
──行ける。
感覚がそう告げ、理性も否定しなかった。
基準を決める。
350円はすべて回収、500円は最低価格4000円がボーダー。
1000円は見送り。
1冊ずつ状態を確認してカゴへ。
全部で30冊、40冊……重みで台車を借りることにした。
精算を終え、ガラガラと台車を押して車へ。
(うまく捌けるといいな)
期待と不安を胸に抱きつつ、紗英は買った本を車に積み込み、次へと向かった。