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[トーキョーゲーム]
ブックオフのコミック棚を眺めるのは、もう日課だ。
とはいえ、レア本に出会えることは、そう多くない。
副業を始めたばかりの頃、「トーキョーゲーム」をネットで売った。
まさかあんな値段になるとは思わなかった。
このことで、市場価格の高いコミック――いわゆるレアものを見抜く目があるのかも、と思った。
それはちょっとした自信になった。
今日、その「トーキョーゲーム」を久しぶりに見つけた。
古びた表紙、擦り切れた角。
小口には経年のシミ。
それでも中はきれいで、ページをめくる手が自然とゆっくりになる。
帰り道、バッグにしまいながら、あの頃を思い出す。
会社員に向いてないと気付いて、独立を目指し、ダブルワークをはじめたあの頃。
大変だったけど、人生で最もやりがいを感じた時期でもあった。
家に戻り、すぐ棚の前に座り込む。
紙の手触りを確かめながら読むと、あの時の自分がそこにいるようだった。
せどりは、ただの商売じゃない。
好きなものに触れられる、小さな幸せだ。
(……まあ、その対象がトーキョーゲームってのも、どうなんだろうな)