【第15話】決着後。
静まり返った訓練場。
私はゆっくりと立ち上がり、皇子のもとへ歩み寄った。
「お疲れ様です、皇子」
「……ありがとうございます。聖女様、加護をしていただき、感謝しています」
ふと、彼が微笑んだ。
その笑顔に、心がほんの少しだけ揺れた。
「何てことありませんよ」
「いや、凄かったです」
彼は真顔であたしを真っ向から否定する。
まぁ確かに、あたしの加護が勝負を決めた感じあったけどね。
聖女の力は殆どの人は見えなかっただろうけど、エルミナがアーシュ王子に送ってた聖女の力より百倍くらいの力があたしからアレクサンドロス皇子に流れていた。
あれが、勝負の決め手だったのかもなぁ。
「王子ー!」
とエルミナが駆けていく。
「ごめんなさい。あたしのせいで、あたしのせいで!」
「……」
「あたしがもっと魔力あれば! 本当の聖女に生まれていたら! こんなことにはならなかったのに!」
エルミナ、何てことを言うの?
起こる問題を全て他責にしてきたアーシュ王子よ?
そんな人に、そんな言質を与えたら……何を言われることか。
「エルミナ」
「はい! あたしが、聖女リリア様に嫉妬したのがいけなかったんです!」
あたしに嫉妬されるようなとこなんて、あるかな?
「可愛くて、綺麗で、賢くて、ドラゴン討伐をワイバーンの群れだろうがエンシェントドラゴン相手だろうが精鋭騎士団と共にやってケロリと全員無事で帰ってきて、歴代最高の聖女で才色兼備で神に最も近い女と言われたあの人に、嫉妬したのがいけないんです!」
あたしは驚いた。
え、そんな高い評価だったの?
なら何で言ってくれなかったの?
むしろ「調子に乗るなよ」とか「お前の代わりなんているんだ」とか「聖女に生まれたからっていい気になってる」とか悪態しかつかれた思い出のみある……。
ざわざわと騎士団や皇帝や宰相達が驚いてる。
「ドラゴン討伐?」「ワイバーンの群れ?」「エンシェントドラゴンを討伐?」「キマイラ如きじゃないじゃないか。全部国家存亡級の事案だぞ」
アレクサンドロス皇子はふとあたしを見て、
「まぁ、あれだけの加護があったら、そりゃ出来るよね」
とほくそ笑む。
あ、なんかあたしへの扱い変わったのを感じる。
「リリア。君は、その、薄々思っていたのだが」
「はい」
「高すぎるその才能に、無自覚なとこがある」
「そうですか?」
「うん。それも学んでいこうね」
とアレクサンドロス皇子は苦笑した。




