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東京妖刀奇剣伝  作者: どるき
出会った彼女に導かれ
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試験日の朝

 一見すると何処もおかしくないようで少しだけおかしなこの世界。

 街行く人をよく見ると稀に刀を持ち歩いている人が見える。

 彼らは帯刀許可証を取得した士。

 ある目的のために公的機関に認められた現代の人斬り役人である。

 そんな士を目指して常磐線に揺られている少年が一人。

 一人で上京するのは初めてである彼の名は石神甫いしがみ はじめと言う。

 今日は神田で開かれる帯刀許可証試験の日。

 山手線に甫が乗り換えると他の受験者が乗り合わせているのかピリピリとした空気が社内に漂っていた。      

 甫は知らぬ顔を維持して神田駅に到着し、そのまま試験会場である神社を目指して駅を出たわけなのだが、彼に付き纏う怪しい影。

 足取りを見て都内に不慣れそうな甫を影は笑う。


(この程度のガキが試験に合格できる訳がねえぜ)


 そう思った影の主は肩慣らしを兼ねて甫を襲うことにした。


「ちょっと良いか。オマエも帯刀許可試験の受験者だろう?」


 見知らぬ男に声をかけられたことで警戒した甫は、相手を無視して神社を目指そうとする。

 しかしこの男はしつこい。

 いくら無視しても男は後をつけてきてあからさまな追跡である。

 そのまま目的地の神社まで到着し鳥居を潜れば受付会場という段階。

 しびれを切らした様子で男は仕掛けた。


「さっきはよくも無視してくれたもんだな」


 甫が声の方へとちらりと目線を向けると男の真っ赤な顔がある。

 これを見てシカトは逆効果だったかと悟った甫は彼の要求に応じてみることにした。


「仕方がないじゃないか。あんなに殺気立った人が声をかけてきたら、普通は逃げるって」

「テメェ……俺を殺気も隠せない雑魚だと愚弄するかぁ!」

(自分で言うなよ)


 このつぶやきは野次馬である他の受験者にとっても共通だった。

 そしてこの試験に慣れている者ほどこういう光景は毎度のモノ。

 たいてい弱き者ほど誰彼構わず喧嘩を売って力を誇示したがる。


「いくら僕が受験慣れしていないのが丸わかりだからって、そういう後輩イビリは弱く見えますよ……センパイ」


 男を軽々と悶絶させた甫は涼しい顔で鳥居をくぐって受付を済ませる。

 彼を侮り景気づけとライバルを蹴落とすことを兼ねて乱暴を働こうとしたこの男の行動は、逆に初受験で固くなっていた甫の緊張をほどよくほぐす結果となっていた。

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