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東京妖刀奇剣伝  作者: どるき
出会った彼女に導かれ

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13/40

係長の推理

 上野駅に向かう道中、歩きながら斬九郎が二人に説明したのは、これまでの事件に対しての彼なりの所見。

 曰く、これまでの事件は、品川という最後の為のテストではないか、という。

 今までに使用された奇剣に共通しているのは、拾った誰かを操ることに特化しているという点。

 甫の手で破壊された上野の奇剣──昇竜を除いて、それら全てが自壊したのは、必要なデータを取り終えたからではないだろうかと斬九郎は推理していた。

 振り返ると新宿では、操られた犠牲者は十徳ナイフを振り回した末、最後に自ら命を落としている。

 新大久保ではペーパーナイフから放たれたカマイタチめいた妖気の刃が死傷者を増やし、五反田では妖気を纏う手裏剣の投擲が無差別に人を襲うなど、死者が出た前半3件では、小型ながら殺傷能力の高い奇剣が用いられていた。

 だが恵比寿や池袋では流れが変わっている。

 いずれも犠牲者がソレを奇剣だと夢にも思わずに拾ってしまい、奇剣が自壊するまで操られて、周囲と自身を傷つけるまでに留まっていた。

 それは甫が撃退した上野でも、彼が犠牲者を止めていなければ死者が出てもおかしくはなかったとはいえ、概ね同じ流れ。

 これら後半3件では、奇剣そのものは犠牲者を操ることに特化しており、武器としては使用しないという点が共通していた。


「だから予告の最後──品川では、両者の特性を併せ持った奇剣が使われるのではないかとオレは睨んでいる」

「うーん」


 この斬九郎の考察に対して、的を得ていると頷く甫とは対象的に律子は唸る。

 どこか出来すぎているという疑念を理由に、素直に飲み込めないようだ。


「どうした。オレの推理は名探偵の孫に聞かせるには稚拙だったか?」

「そんなことはないわよ。むしろわたしの予想よりも、ずっと理路整然としているし。だけどね……妙に引っかかるのよ。予告した上でバラバラに事件を起こして、残るは最後の1箇所というこの状況に。出来すぎじゃないかしら」

「それは確かにある。だからオレらも最後の花火を打ち上げるタイミングには、既に事件を起こした街でも何かが起きると睨んでいるぜ」

「その備えは当然。だけど事件の発生が気持ち悪いくらいにトントン拍子なわりに、実のところ予告の内容はゼンゼンなのよ。予告状では歪んだ都を滅ぼす──つまりテロを行うのは妖刀に操られた『七つの人柱を以て顕現せし七英雄』だって書かれている。だけど今は妖刀に操られた『英雄候補』が小出しに6人現れて、全員が失敗して英雄になれなかったに過ぎないわ。だからまだ事件は序章に過ぎないんじゃないかしら。これから本命となる真の七英雄が現れるとかさ」

「それは単純に、妖刀で操られた人を英雄と呼んでいるだけなのではないですか? それにいくら予告状なんてモノを送りつけたからと言って、黒幕からすれば全部が全部、律儀に筋書きを合わせる道理もないですし」

「ハジメくんが言うこともわかるよ。たしかに予告状なんてイチイチなぞる必要なんて無いわ。だけどそれを言い出すと、最初から予告状なんて送る必要がなくなってしまう。妖刀奇剣にかかわらず、古今東西、予告状には何らかの理由がある筈なのよ」

「そんなもんがある以上、もちろん警察だって諸々に目を光らせているぜ」

「それで3週間経っても警察が成果を挙げていないんだから、既存の反社会的な連中の仕業じゃなさそうに思うわ。大掛かりな初犯かもしれないけれど……わたしの勘だと、古い人間が関わっているんじゃないかしら。警察のマークから外れるくらいの」

「例えば御老公が若い頃に反社会的な活動をしていた人間か。奇剣作りの巧妙さも、その当時からテロ活動をしていたって言うんなら筋が通るぜ」

「でもそうなってくると、天樹さんなら事件の裏にいる黒幕の当たりがついているんじゃないですか? 全然そんな様子ではありませんでしたが」

(あのバアサンも意外と腹黒いとはいえ、この状況で情報を隠したりはしねえよな。いくら孫が駆け出しの探偵だからって、練習台にするにしては、この事件は既にデカくなりすぎているぜ)

「ソコがハジメくんの言う通りなのよねぇ。だから予め言ったじゃない、左さんのほうが理路整然としているって」


 事件に携わる係長たちの共通認識と言ってもいい斬九郎の推理と、予告状に焦点を当てた律子の推理。

 どちらも完璧では無いとはいえ、この続いている事件を地道に追いかけている前者のほうが、後手に回っているものの堅実なのだろう。

 だから後者はあくまで参考意見。

 多くの人員を割いてまで調べるのはリスキーというのは、当の律子ですら自覚していた。


「まあ……これ以上は歩きながらするモンじゃねえな。そろそろ現場入りだから、無駄口はここまでだぜ」


 上野署を出てからの推理を交えながらの移動はここまで。

 駅構内に入れば雑音が声をかき消してしまう。

 斬九郎の指示に従って無駄口を閉じた甫は、昨日の現場に近づくにつれて背筋が凍っていく。

 この気配こそが、斬九郎がこれから調べる「妖刀事件の残り香」だと二人が知るまで、それは今頃く。

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