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ベクトラムへの手紙


   ベクトラム様へ


 早いものでベクトラム様が石になられてから、

もう3年です。

わたしも16才になりました。

お兄様は、ボーゲン侯爵領の領地を豊かにしようと

毎日奮闘しておられます。

 ベクトラム様のお母様のお名前も、正式にボーゲン侯爵家の系譜に書き加えられましたよ。

昔、ボーゲン伯爵家のお墓があったと伝えられている場所に、お母様のお墓も作られました。

 この場所には、ボーゲン伯爵家の家族の方のお骨も土に還っていらっしゃるでしょうから、お母様の魂も、ここでゆっくり休んでいただきたいです。

またお手紙を書きます。

                ミルバ



  ベクトラム様へ


 トルクお兄様がとうとうご結婚されました。

お嫁様は、隣の領地のチャンドラー伯爵家のお嬢様でシンシアさんとおっしゃいます。ベクトラム様のお母様の妹さんが嫁がれたお家だそうです。

ベクトラム様と血の繋がりのある方がお嫁にいらして嬉しいです。仲良しになりたいな。

またお手紙を書きます。

                  ミルバ



  ベクトラム様へ


 シンシアお義姉様が、今日男の子をご出産されました。名前はトーマスと言います。

母子共に健康で、トルクお兄様も表情筋が緩みっぱなしです。

 領内も人が増えて、領都のベクトも大きくなったのですよ。

ベクトラム様にも見せて差し上げたいです。

またお手紙を書きます。

                 ミルバ



 ベクトラム様へ


 ベクトラム様、覚えていらっしゃいますか?

孤児仲間で、騎士団に入ったマルクにプロポーズされました。

 でも、「私は誰とも結婚するつもりはありません」とお答えしたら、マルクは「結婚してくれると言うまでいつまでも待つ」と言われました。

 私は、ベクトラム様の石化が解けるまで毎日祈りを捧げる生活で満足しているのです。

どうしたら良いかお兄様に相談したら、「ミルバの気持ちに正直になれば良い」とおっしゃいました。

私の気持ちが自分でもよくわからなくて困っています。

またお手紙を書きます。

                ミルバ



 ベクトラム様へ


 マルクが盗賊の討伐中に怪我をして、左腕を失いました。騎士団も退団して自暴自棄になっています。私は、また元気なマルクになってもらいたいのです。私が悲しかった時にいつも側で励ましてくれたマルクを愛していると気がつきました。

ベクトラム様が復活されるのを一生お待ちすると言っていたのに申し訳ありません。

私はマルクと結婚する事に決めました。

またお手紙を書きます。

                  ミルバ



 ベクトラム様


 マルクと結婚して、マルクと一緒に王都からボーゲン領に引っ越しました。

マルクは利き腕は無事だったので、お兄様の補佐官として働いています。

マルクは神殿学校でも優等生だったので、お兄様は将来的に自分の右腕になってもらいたいそうです。

マルクもやる気に溢れていて、私も一生懸命領の為に働きたいです。

またお手紙を書きます。

                   ミルバ



  ベクトラム様


 嬉しいお知らせと悲しいお知らせがあります。ミルバが女の子を出産しましたが、産後の肥立が悪く亡くなりました。

生まれた子供は元気で、ミルバが娘が生まれたらジュエルと名付けたいと言っていたので、その通りにジュエルと名付けました。

でもマルクはずっと放心状態で、とても子供を育てられる状態ではないので、ジュエルは私達夫婦の養女にしました。

ミルバがこんなに早く逝くとは思いませんでした。

皆嘆き悲しんでいます。

                  トルク




 ベクトラム様


 ミルバの娘、ジュエルも3才になりました。

ベクトラム様に拾って頂いた頃のミルバとそっくりで、舌足らずで話す様子がかわいいです。

 マルクも娘の成長を生き甲斐に頑張っています。

2人が幸せに生きられるよう見守っていきたいと思います。

                  トルク



 ベクトラム様


 ベクトラム様がいつ復活されても良いように、王都の商業ギルドにベクトラム様名義で金貨500万枚を信託預金にしました。

あの時、ベクトラム様に神殿学校の授業料を払って頂けなかったら、私は学業を修める事ができず、領地の運営などできなかったでしょう。

ベクトラム様に頂いたご恩にはとても足りませんが、復活されてすぐ使えるお金としてお使いください。

復活された時には、ボーゲン侯爵家がベクトラム様の後ろ盾になるよう子孫には申し伝えて参ります。

どのような事でもご用命下さい。


                  トルク


 ベクトラム様


初めまして。トルク・ボーゲンの息子、トーマス・ボーゲンと申します。

先日、父トルク・ボーゲンは75才の生涯を閉じ、神の御許に迎えられました。

子供の頃から王都に行くと、ベクトラム広場で英雄像を見ながら父がベクトラム様の事を語ってくれました。

私も息子が2人おりますので、彼らに父から聞いた話を伝えていきたいと思っています。

ベクトラム様が復活される時を心待ちにしております。


              トーマス・ボーゲン

 




ベクトラムが石になって、永い時が経ちました。

魔族と違って寿命が短い人間は、子孫に使命を伝える事で復活したベクトラムを支えようとします。

そんなベクトラムは、無事復活できるのでしょうか?

次回、7月31日で完結になります。

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