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第3話

「成程」

 それだけしか言わず、磯野員昌は自分なりに考えをまとめた。

 要するに竹中重治としては、イヴァン4世の娘をモスクワのクレムリン宮殿から解放し、エジプトに連れてきて、結婚させるつもりなのだ。

 更に言えば、その結婚で儲けた子どもは、(東)ローマ帝国の正統な継承者であると主張できる。


 そこまで考えた後で、磯野員昌はイヴァン4世の娘の結婚相手は誰なのか、と考えた。

 浅井長政殿にはお市という正妻がいるのに、誰と結婚させるつもりなのだろう。

 先程、浅井亮政と結婚させると言われたが、7歳の亮政は余りにも幼過ぎないだろうか。

 磯野員昌の考えを読んだかのように、竹中重治が口を開いた。

「イヴァン4世の娘の結婚相手ですが、浅井長政殿の長男になる亮政殿を考えています。ですが、少々問題があります。実はイヴァン4世の娘3人、皆が亮政殿より年上らしいのです」


「年上らしい?」

 磯野員昌は疑念を覚えた。

 仮にもモスクワ大公国という1国の大公女なのだ。

 普通なら、年齢等が分かる筈ではないか。


 竹中重治は、更に説明を行った。

「イヴァン4世の娘3人ですが、モスクワのクレムリンの奥深くに幽閉されています。甲賀者の腕利きを何人か使って、探りを入れましたが、一部は行方不明になる有様で、娘3人の生死さえ完全には分からないというのが正直なところです。尚、娘3人の生母のアナスタシア・ロマノヴナ・ザハーリナは1560年に亡くなっており、それから考えると、仮に末娘にしても1560年生まれになる一方で、亮政殿は1564年生まれになります」


「確かにその通りですな」

 磯野員昌は、取りあえずの相槌を入れた。

「とはいえ、政略結婚において、年齢は基本的に関係ありません。それこそ7歳の男が、20歳を超えた女人と婚約から結婚に至って何の問題があるでしょうか」

 竹中重治は偽悪ぶって言い、磯野員昌も事情が理解できるだけに無言で肯かざるを得なかった。


「そういった次第から、娘を解放して、このエジプトに連れてきて欲しいのです。何しろこれはオスマン帝国からの依頼という側面もある以上、こちらとしても大手を振ってモスクワ大公国に派兵できます」

「ふむ。しかし、オスマン帝国はそういったことを警戒していないのでしょうか。警戒していない筈が無い、と私は考えますが」

 2人は更にやり取りをした。


 そこに浅井長政が口を挟んだ。

「背に腹は代えられない、というのが、まずある。オスマン帝国にしてみれば、多正面に敵を抱えている。東欧では神聖ローマ帝国、中東ではサファヴィー朝ペルシャ、地中海にしてもヴェネツィア海軍は決して軽視できる脅威ではない。何しろ、北米艦隊がオスマン海軍を半壊させたからな」

「そういえば、鈴木孫一殿がやらかしましたな」


 浅井長政の言葉で、磯野員昌は思い出して言った。

 先年、北米艦隊がアルジェを襲撃し、バルバリ海賊に大打撃を与えた。

 バルバリ海賊の頭領といえたクルチ・アリが敗死し、その部下の海賊全員が海の藻屑になった、とエジプトに伝わった程で、それがあながち間違いと言えない大打撃だった。

 バルバリ海賊はオスマン帝国の同盟艦隊と言って良かったが、この打撃によってほぼ消滅してしまい、オスマン帝国海軍の戦力は、このために事実上は半減したとまで噂が流れている。


 更にその後で、旭日旗を掲げた日本海軍が地中海へ侵出したり、私掠船が全面禁止されたりしたことで、地中海の海賊は大手を振って海賊行為が出来なくなってもいる。

 これは地中海の航行の安全度を上げる一方で、貴重な実戦訓練の場まで奪われたということであり、本来は陸軍国であるオスマン帝国にしてみれば、頭が痛いどころの話では無かった。

 クルチ・アリ敗死等の件は、本編第5部で描いた通りです。


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