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余談 「モスクワ大虐殺」の真相

 全くの余談と言えば余談になりますが、本編においてエジプト軍が、「モスクワ大虐殺」の汚名を被った背景説明になります。


 尚、2022年現在とこの当時では金の価値も違うみたいです。

 この当時、ドゥカート金貨2枚があれば、庶民は家族4人が悠々と1月暮らせたようで、それから換算すると、金1グラムは3万6000円程度と推測されます。


 ということはドゥカート金貨4万枚をバラまいたエジプト軍は、約50億円をバラまいたことに。

 それで、兵1万人と馬3万頭の2月近い糧食が賄えるのか?

 ちょっと微妙な話かもしれません。

 1571年5月に起きたとされるエジプト軍によるモスクワ市及びその周辺の住民の大虐殺。

 死者の総数は、当時の記録(但し、伝聞によるもの。つまりは二次資料)によれば、エジプト軍によって最大で約80万人が虐殺されたとなっている。

 そして、これは数世紀が経った現在に至っても、実数はともかく、真実であるとされてきた。

 だが、最近の歴史研究の進捗により、大いに疑問が呈されるようになっている。


 まず、この件のエジプト側の複数の一次資料によれば、そもそもエジプト軍に虐殺をする時間的余裕がほぼないのである。

 エジプト軍は、アゾフからモスクワまで20日余りの強行軍を行い、更にモスクワからアゾフまでほぼ同様の日数で移動をして、モスクワに滞在したといえるのは、ほぼ1日だけである。


 それにエジプト軍は1万人程で、それだけの軍勢で、モスクワ及びその周辺の住民を大量に何十倍も殺戮して回ることが本当に可能な話だろうか。

 更に、この時にモスクワからアゾフに向かうエジプト軍と同行していた(後にローマ帝国女帝に即位する)エウドキヤの回想録等によっても、この時にモスクワが炎上したことは書かれているが、住民に対する大虐殺があったとは書かれていない。


 これは後に自分がエジプトに移住したこと等から、エジプト軍を庇うため、という主張もなされるが。

 モスクワが炎上したことには触れている以上、虐殺があったなら、それに触れてもよい筈である。

 勿論、エジプト軍として従軍した者も、誰一人、虐殺行為があったことを認めてはいない。


 その一方で、エジプト軍が去ったすぐ後、クリミアハン国軍がモスクワに押し寄せていた。

 更にモスクワを襲撃したエジプト軍を追撃しようとモスクワに急行してきたモスクワ大公国軍主力が、クリミアハン国軍とモスクワ及びその周辺で激戦を交わす事態が起きている。

 その際に、クリミアハン国軍もモスクワ大公国軍も、現地調達(要するに略奪)で軍隊の補給を基本的に賄っていた。

 この際に双方が起こした住民に対する虐殺事件が、周囲にエジプト軍によるものと誤って伝わったとする見解が、歴史学者の間では強まっているのだ。


 もっとも細かいことを言えば、エジプト軍が全く冤罪という訳でもない。

 クリミアハン国軍やモスクワ大公国軍が、住民に対する虐殺事件を引き起こした一因が、エジプト軍がモスクワへの補給を金貨をバラまくことで賄ったことだからだ。

 その金貨の枚数だが、アゾフからモスクワまででエジプト側の公式記録によれば約4万枚、ロシアの伝説では約10万枚もの金貨がバラまかれたと伝わる。

 尚、この当時の金貨の主力はヴェネツィアのドゥカート金貨であり、1枚が約3.5グラムということから考えると、エジプト側の公式記録でも140キロもの金が使われたことになる。

 そして、金貨を手に入れたモスクワ及びその周辺の住民は、様々な手段で金貨の隠匿に努めた。


 この話を聞きつけたクリミアハン国軍やモスクワ大公国軍の兵士の多くが、住民が隠匿した金貨を手に入れようと略奪を働き、更に一部に至っては金貨を隠していないかと住民の腹を裂くようなことまでしたという記録がある。


 又、モスクワ大公国のイヴァン4世は娘を奪われたことを激怒し、その際に娘の警護に当たっていた面々等を大量に処刑するということもあった。


 これらが噂として伝わるうちに、エジプト軍の仕業によるモノと曲解されてしまったことから、エジプト軍が大量虐殺をモスクワやその周辺で行ったという冤罪をこうむることになったのでは、と現在では多くの歴史家が推測するようになっている。

 ともかく数百年に亘るエジプト軍の冤罪が晴れることを願うばかりである。

 これで完結させます。


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― 新着の感想 ―
[良い点]  モスクワ大遠征が題材だからてっきり軍記モノかと思って読んでいたら、痛快アクション活劇だったでござる♪あとラブロマンスも、ある意味題名に偽りなし!(^皿^;)想像の斜め上だったけど大変おも…
[良い点] 皇軍来訪世界の1620年以降をいろいろ想像してしまいます。 [一言] この世界のWikipedia(みたいなもの)を是非、見てみたい。
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