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第19話

 そして、20日余りの旅路の末に、エジプト軍はアンナとエウドキヤを連れて、モスクワからアゾフまでの移動を無事に果たすことができた。

 多くの将兵が疲労困憊する強行軍ではあったが、その甲斐あって、モスクワ大公国軍の追撃を振り切れたと、それこそ神に感謝する事態だった。

 そして、アンナやエウドキヤも、アゾフに無事にたどり着き、後は船に乗って、エジプトへ向かうだけになるということで、これで移動の苦労から解放されるということで安堵する事態だった。


(もっとも、詳細は別途、後述するが、モスクワ大公国にしても、実はエジプト軍を追撃するどころではない事態が起きていた。

 クリミアハン国は、エジプト軍が単独行動を行い、モスクワを急襲しようとしているという情報を把握したことから、自分達も便乗して、モスクワを目指す軍勢約4万人を派遣した。

 だが、エジプト軍がそれこそ金をバラまいてモスクワを急襲したのに対し、クリミアハン国軍は現地略奪で補給を賄ったことから。

 クリミアハン国軍の進撃は遅延してしまい、5月の後半になって、モスクワを襲撃することになった。


 更にモスクワ近郊において、クリミアハン国軍の一部が、エジプト軍がバラまいた金貨を見つけ、その入手経緯を知ったことから、それこそ住民の腹を裂いて虐殺し、金貨を探すような事態が起きた。

 又、イヴァン4世もエジプト軍のモスクワ急襲、更に娘達がエジプト軍に攫われたらしいことを知るや否や、軍の主力をモスクワへ、エジプト軍追撃に差し向けたことから、クリミアハン国軍とモスクワ大公国軍は激戦を行った。

 そして、モスクワ大公国軍も、住民が金貨を入手しているらしいことを把握すると、住民の一部に通謀利敵の嫌疑を掛け、腹を裂いて虐殺するようなことをしたのだ。


 更にはイヴァン4世がエジプト軍に対して敗北した将兵の責任追及、具体的には処刑を行うようなこと等もしたことから、後世においてモスクワ大虐殺として喧伝され、全部で約80万人が殺戮されたと西欧にまで噂が流れる事態が引き起こされた)


 そして、アゾフまで無事に帰還したことから、流石に全ての将兵には無理だったが、士官クラスはきちんと屋根のある建物の中、きちんとした寝具のある部屋で眠ることができるようになった。

 当然、アンナやエウドキヤも屋根のある建物、そして、寝具のある部屋で眠れる立場である。


 3人は、そのために準備された2つの部屋へ移動した。

 尚、1つは2人部屋、もう一つは1人部屋で、3人が集ったのは2人部屋である。

「ようやく人心地がつけますね」

「ええ」

「本当に良かった」

「ゆっくり眠れるようになって良かったね。姉さん」

「そんな呼びかけはしないで。私は侍女だと言ったでしょう」

「ここには身内しかいないから大丈夫」

 そんな会話を慶次とアンナ、エウドキヤは、暫くそこで交わした。


「それでは姉妹でゆっくり休んでください」

 慶次は夜も更けたことから、そういって、部屋から出ていこうとしたが、エウドキヤの方が気を利かせた。

「私が1人部屋で寝るから」

 エウドキヤは、そう悪戯っぽく言って、慶次を押し止めて、自分が出ていこうとする。

 さしもの慶次も、この義妹の好意を素直に受けてよいのか、戸惑う事態だった。


「1月近くも、ずっとお互いに我慢していたのでしょう。もう我慢しなくていいから。そして、二度と公然と呼べないのだから、ここでだけは、兄さんと呼ばせて。兄さん、姉さんをよろしくお願いします」

 更には、そうまで言って、エウドキヤは自分が出ていこうとする。

 慶次とアンナは、エウドキヤが涙を浮かべているのに気付いた。


 3人は暫く抱き合い、エウドキヤは名残を惜しんで出ていった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 妹殿下の気配りが、後世の小説家・漫画家・脚本家の為に18禁方向にジャンルを広げてくれているようです。ハーレクインとかも。 [気になる点] モスクワ大公国が張子のクマ。何故か史実の21世紀と…
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