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第1話

 そもそも前田慶次がアンナと知り合うことになったきっかけについてだが。


 少し時をさかのぼる。

 1571年1月、浅井長政は磯野員昌を呼び寄せて、命令を下していた。

「オスマン帝国に協力する将兵の総指揮官として、1万の兵をそなたに預ける。尚、その将兵の内容等についてはできる限りの希望を聞くつもりだ」

 磯野員昌は、主の浅井長政に問い返した。

「一体、どこに私は赴いて戦うことになるのです」

「モスクワだ」

 浅井長政は即答した。


「モスクワ」

 思わず即答したが、磯野員昌は、その地名に心当たりが無かった。

「一体、どこなのでしょうか」

 無知をさらすようで、言いにくかったが、磯野員昌は主に尋ね返した。


「ここになります」

 浅井長政の傍にいた竹中重治が、大きな世界地図を示した。

 皇軍知識を生かして作られたもので、現在の世界地図としてはもっとも精密な代物だ。

 但し、メルカトル図法で作られた代物なので、南北に行くほど、実際とは違った地図になる。

 磯野員昌は、竹中重治が指し示す場所を見て、思わず唸りながら言った。

「余りにも遠すぎる」


 実際、浅井長政と磯野員昌が会話をしている場所は、具体的に言えばエジプトのカイロであり、そこから地中海を経て黒海に入り、黒海沿岸に上陸して、磯野員昌率いる将兵はモスクワを目指して進軍することになるのだが。

 モスクワはカイロから地形を完全に無視した直線距離で考えても約3000キロは離れたところであり、実際の経路を考えるならば、4000キロはどう見てもあるだろう。


「確かにその通りです。しかし、これには理由があるのです」

 竹中重治は、二つの理由を挙げた。

 まず第一に、オスマン帝国から属国であるエジプトに対して、この進軍を行うように命令が下されたことだった。

 エジプトが属国である以上、オスマン帝国の命令には基本的に従わねばならない。


 更にそもそもオスマン帝国がこの命令を下した理由、背景だが2つあった。

 まず第一に、モスクワ大公国とオスマン帝国の同盟国というより従属国だったクリミアハン国とが険悪な関係にあり、特にアストラハンの領有をめぐって紛争が起こっていたことである。

 そのためにクリミアハン国は、オスマン帝国に援軍の派遣を求めていた。

 そして、第二の理由となるが、この当時、オスマン帝国はエジプトが結果的には属国となったエジプト独立戦争で、自国の軍に大打撃を被っていた。

 このために、オスマン帝国としては、エジプトに命じてエジプト軍を援軍として送ることにしたのだ。


 だが、それだけならば、エジプトにしてみれば、義理的派兵で済ませるという選択肢があった。

 磯野員昌は、「皇軍来訪」以前からの戦歴を誇る勇将であり、義理的派兵で戦場に赴かせる等、エジプトからすれば極めて勿体ない指揮官であった。

 義理的派兵でエジプト軍を派遣するならば、磯野員昌を総指揮官とする必要等、皆無と言って良い。


 しかし、竹中重治と浅井長政が話し合った結果、裏ではエジプト独自の利益を目指して、この派兵は行われることとなり、そのためには磯野員昌を総指揮官とするのが相当という結論に達したのだ。

 それが第二の理由になる。


「モスクワ大公国は、(東)ローマ帝国の後継者だそうです。そうした理由からも、我々は本腰を入れて、モスクワ大公国に遠征軍を送ることにしました。近い将来を見据えて、モスクワ大公国を打ち破り、エジプトこそが(東)ローマ帝国の後継者という大義名分を掲げて、オスマン帝国と戦えるようにする準備を、我々は極秘裏に整えておくのです」

 竹中重治は、磯野員昌に対して力説し、その横では浅井長政が肯いた。

 竹中重治の言葉を聞いて、磯野員昌は思わず呆然としてしまった。

 ご感想等をお待ちしています。


 尚、明日早朝から出かけるので、更新のみ行い、感想返しは明日夕方以降になります。

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