2-4
「ふふっ……」
カジュは口に手を当てて思わず笑った。二人の会話は掛け合いのようで面白かったのだ。
「あっ笑った! 掴みはばっちりだね。これから二年間仲良くしてくれると嬉しいな」
カジュが笑ったことに気が付いたアヤメは微笑んで言った。
「うん、こちらこそ……!
あの、シオン、荷物は重くありませんか? 坂は登り終わりましたし、自分で……」
カジュはシオンに微笑みかけながら、早歩きのシオンのすぐ後ろまで行くと声をかけた。
ずっと荷物を持ってもらうのは申し訳ない。
「大丈夫だ」
シオンはそれだけ返すとまたどんどん先に進んでいってしまう。
「相変わらずだなあ、あいつは」
シオンが一人でどんどん進んでいくのを見て、アヤメは笑った。入学式の待機場所はもう少し先である。
「それにしても、どうやってシオンとカジュは知り合ったの? シオンにこんな可愛い女の子の知り合いがいたなんてびっくりだよ!」
アヤメはゆっくりとカジュと歩きながら、問いかける。
相変わらずシオンの歩みは早くどんどんと背中が離れていく。
「ええと、シオンのおばあさまにお世話になってね。そのつながりでシオンに勉強を見てもらっていたの」
カジュは可愛いと言われたことは社交辞令として受け取って説明した。なんだかむず痒い。
「へえ! シオンが勉強をねえ。
あいつ勉強も剣もすごいからなあ……俺も教えてほしいくらいだよ」
「そんなにシオンってすごいの……?」
カジュは恐る恐るアヤメに尋ねた。シオンが勉強が得意なことには気が付いていたが、剣の腕も立つのは初耳である。
「すごいよ! 16歳で騎士団に研修生として入ったと思ったら、一年で団の中で有数の剣使いに数えられてしまうぐらいだ。
しかも侯爵家の次男だから、身分も申し分ない。いつか隊くらいは率いるだろうね」
自慢げに語るアヤメの横顔を見ながら、カジュは自分が追放された身でシオンの近くにいていいのか不安になっていた。
追放令嬢と親しくしていたらシオンの立場が危うくならないだろうか。
(ロメリア様はプリムラ学園には身分で差別はないとおっしゃっていたけれど……本当かしら……)
表面上は平等を掲げていても、入学してみれば派閥などがあってもおかしくはない。カジュは平民出身ということになるだろうから、明らかにシオンとは釣り合っていなかった。
(なんだかお礼に栞を選んだことが恥ずかしくなってきたわ……)
はあ、と小さくため息をついたカジュを横目にアヤメはニヤリと笑った。
なるほど、シオンが気にかけるわけだ。アヤメは上機嫌で歩いて行く。
「……おっ、ついたね! ええと、クラスは……」
待機場所はクラスによって分かれていた。どうやら待機場所がそのまま一年間過ごす教室になるらしい。
「全員Aクラスだ」
先に到着していたシオンはすでに三人のクラスを把握していた。新入生はAからCの三組に分けられており、ひとクラス20人前後である。
プリムラ学園を含むカルミア国の高等学校は2年制であるため、2年間クラス替えは行われない。
「2人とも同じクラスでよかった……!」
カジュは笑顔で言った。
やはり見知った人が一緒なのは心強い。




